#ノンフィクション、エッセイ

都々逸談話・「今回だけよ」

(ーー;)今度ばかりは許せぬけれど 今度だけよと身を許す この都々逸に対し《今度が二度出てきますが、これで良いのかしら??「今回だけよ」の方がいいのでは?》との指摘を受けた。 他人の作品を、自分ならこうするだろうと思案しながら添削することは、推敲…

ご無沙汰です

僕にとって題詠がなんなのかは今もわからない。わからないのだけど、なぜかまた参加したくなる。去年は雨をテーマにしたので、今年は風で行こうかと考えていたのだが、母が亡くなったので、母の死をテーマにしてみた。毎年のことだが、締め切り間際の駆け込…

病気にならない生き方

「運び来るものは病か春一番」牧童 世の中にはいろいろな健康法が氾濫しているが、自分に合う健康法を見つけだすのは難しい。 僕も60歳を過ぎ、そろそろ自分に合った健康法を身につけたいと思うのだが、なかなか長続きしない。健康法にようやく慣れた頃には…

全面ごめんの人生だけど

「ごめんねと冷たい指でメール打つ」牧童 僕は「ごめん、ごめん」と、ごめんを連発しながら生きてきた。ごめんねが僕の口癖になっているのだ。 ごめんね。僕には、こんなふうにしか君を愛せないんだ。 深夜、一人で温泉に入った。大浴場には五十代くらいの男…

起承転結

「くれなけりゃなおさら欲しいバレンチョコ」牧童 今年のバレンタインは不作だった。このまま恋とは無縁の老後生活になっていくのだろうか。 バブルの現役時代はオフィスの机の上は高級チョコで山積みになっていた。バレンタインの後は虫歯がひどくなり、歯…

鬼婆化する女たち

「立つ春や家も建たずに老いにけり」牧童 恵方巻きの話を書こうと想いつつ、時が過ぎてしまった。今ごろ書くのは阿呆巻みたいだが、来年を待つには年を取りすぎた。 恵方巻などという風習は最近までなかったのに、いつの間にか当たり前のように太巻が店に山…

火の用心

「靴下の穴繕わず餅を焼く」牧童 命が無惨に失われていく。命の大切さを多くの人々が語る一方で、NHKの大河ドラマでさえ殺しあい、奪い合い、晒し首を良しとしていた時代を映し出す。相変わらずアニメも派手な闘いを描き出す。殺しあうのは本能なのだろうか…

穴があいた靴下

「靴下の穴を見つめて日向ぼこ」牧童 硝子ごしの日だまりの中で足を投げ出して座っていた。ふと見ると靴下の指先に小さな穴があいていた。さらに大きく広げ、親指を出してみた。可愛いなと60歳を過ぎた僕が微笑んだ。 靴下に穴があくと、穴があいていない…

勘を鍛える

勘を鍛える 「もう一杯飲むか飲まぬか寒・勘・燗」牧童 勘がいい奴と悪い奴がいる。勘がいいか悪いかによって人生変わってしまうはずだ。 残念ながら僕は勘がすこぶる悪い。例えば初デートの時、注文した料理をひつこく勧める。どうも様子が変だから問いかけると…

流されちまえよ

「汚さずにとっとと失せろ冬の糞」牧童 ここ数日、あちこちでトイレ話を楽しんでいる。トイレや便の話は面白い。 汚すつもりはないが、汚れてしまうトイレ。 いつまでも、こそこそと便器にしがみついている糞を見ていると、我が分身であっても非常にむかつく…

幸せのテールランプ

「幸せを纏わぬままに冬支度」牧童 家の前の夜道に停められていた小型車に初老の男が乗込もうとしていた。突然、二階の窓が開き、二人の幼子の大きな声が響き渡った。 おじいちゃん おじいちゃん ありがとう いつもありがとう おじいちゃん おじいちゃん ま…

名文より紀文の秋

「酒飲まず寝るにはおしい秋の月」牧童 四十年以上、毎晩、酒を飲み続けてきた。大酒を飲み、ろくでもないことを懲りもせずに繰り返してきた。 酒が飲めない家系に生まれ育った僕は、もともとはすぐに酔っ払ってしまう体質なのだが、無理やり飲み続けること…

燃えない秋

「食欲の秋も燃えないゴミの山」 牧童 最近、コンビニやスーパーの弁当で夕飯を済ますことが多くなってきた。それを食いながら缶ビールや缶チュウハイを飲んでいる。 たちどころに燃えないゴミが山となり、その中で暮らしている。 生ゴミのほうが少ない。 こ…

君が泣く場所

「秋雨や労働意欲湧かぬまま」 牧童 雨がまだ降り続いていた。 雨の中、虫が鳴いている。 晴天の時ほどの大合唱ではないが、虫が鳴いていた。 「葉の下は雨に濡れぬか秋の虫」 牧童 雨の中でも鳴いている虫は、濡れない場所にいるのかな。それとも雨に濡れな…

食いねぇ、食いねぇ、肉食いねぇ

「欲あれど老いてほそぼそ秋の食」 牧童 先日、ふらりと入った大衆酒場でひとりで飲んでいた。 店では、しゃぶしゃぶ食べ放題キャンペーンをやっていて、さらに追加料金を払えば飲み放題にもなる。一人でもいいそうで、僕なら充分にもとはとれる金額だ。 で…

鏡の中のニヒリスト

「似合わぬと付けてははずすサングラス」牧童 「チョイ悪オヤジ」だと言われたことがある。賞賛だったのか、けなされたのかはよくわからないのだが、この中途半端な称号をいただいた時の気分は満更でもない。 「越後屋、お主もチョイ悪よのう、ウッシッシッ…

立ち止まれば涙流れて

「疲れ果て止まればどっと汗だ汗」牧童 僕は真夏の海が好きだから炎天下は嫌いではないのだが、さすがに歩き回るとなると辛い。 歩いている時はあまり汗を感じないのだが、疲れて立ち止まると、どっと汗が流れだす。 人生もそうかな。 立ち止まると、どっと…

目前の禁断症状

「ふと見ればPCと朝日の中におり」牧童 ネットは見知らぬ人たちとの会話が楽しめる。24時間、いつでも楽しめる。ネット上のコメントには送信時間が記載されている。その時間を見ると、とんでもない時間に送信されているものもめずらしくはない。 この人は今…

いい人になったみたい。

「この川も晩夏の海へ流れゆく」 牧童 今はもう秋。 誰もいない海。 海底奥底の流れが変わり、海の霊気が秋を告げる。そんな海の秋を感じとれる自分でいたいのに、無感動のまま秋を迎えている。 「陽が沈み虫にバトンを渡す蝉」 牧童 日の出が遅くなり、日の…

女心と秋の空

「弱々し心も愛しぬるき酒」牧童 僕が子供の頃、冬に冷たいものを口にする機会は少なかった。小学5年生の頃、親の反対を押し切ってアイスのクリスマスケーキを買ってもらい、感動したことがある。冬にアイスを食べるのは画期的な出来事だったのだ。 現代人…

夏の終りに

蝉落ちてもがき鳴き死ぬ風の道 牧童 秋の気配が少しずつ漂いはじめている。 酔った素肌に夜風が心地よかった。突然、光の中に蝉が落ちてきた。腹を上にし、もがき、暴れ狂い、あちこち体をぶつけながら、けたたましい鳴き声をあげ続けていた。 断末魔の叫び…

農薬に我が命を捧げる

柚の花やあの冬想い一人酔う 牧童 僕は果物が好きだ。一番よく食べるのは柑橘類。グレ-プフル-ツやカルフォルニアオレンジは一年中、よく食べる。グレ-プフル-ツが続くとオレンジが食べたくなり、オレンジが続くとグレープフルーツが恋しくなる。 先日、…

君と会いたい

乱れてもまた乱れても夏は過ぎ 牧童 女子高校生が同級生を殺害し、首を切断した。報道では犯罪者の名前は発表されていないが、ネットの中では未成年者の実名も顔写真も発表されているし、いろいろな話も書き込まれている。犯行当時、彼女は殺害現場の実況を…

ブログ・パラサイト

メル友に暑いですねと今日も書き 牧童 群れをなさず、他人と同調せず、人を傷つけても気にもせず、適当なブログを見つけては言いたいことをズバズバと書き込んできた。 僕はブログ・パラサイトの時代が長かった。この言葉は僕の造語だ。面白そうなブログを見…

白髪の思い出

「毛染やめ共に白髪に熱射乗せ」 牧童 僕は若い頃から白髪が多かった。早くロマンスグレーになりたいと思っていた。 二十数年前、黒々とした陰毛の中に一本の白髪を発見し、四つ葉のクローバーの時のように感激した。抜き取り、置時計の後ろにセロテープで貼…

虫がいない自然の中で

「梅雨入りや虫と暮らせぬ我も濡れ」牧童 毛虫が大量発生し、壁面にびっしりとへばりついていると言う。殺虫剤も雨のため効果が薄れてしまうらしい。さあ、みんなで見に行きましよう、だって……。冗談じゃない!僕は遠慮しておく。毛虫と聞いただけで慢性蕁麻…

六個の月日

「皺に梅雨不易流行ままならず」牧童 あっというまに六月が終った。今年も半年が過ぎてしまった。 何ひとつうまく進展しないままに、時間だけが無駄に消費していく。 このまま何も変わらないのなら、それはそれでいいのだが、思惑とは異なる方向へと何かが変…

保存されたメール

「梅雨に濡れ送る宛なきこのメール」牧童 伊豆高原に向かっていた。僕の前に若いカップルが座った。車中、ずっと言葉を交わさず、携帯を凝視していた。楽しそうな雰囲気が伝わって来ず、僕には異様なカップルとしか思えなかった。この間、僕が何をしていたか…

鬱的な日々

「あれやこれなおせぬままに初夏の風」牧童 実は今の僕は鬱期にいる。特に外因があるわけではなく、周期的な鬱だ。この期間は書く意欲、書く喜びが激減してしまう。言葉が浮かんでこない。浮かんでも陰気な言葉が先に多く出てくる。例えば「あ」で思い付く言…

小さな死

「また家に帰れぬ夜更け梅雨寒し」牧童 貧乏暮らしの僕は昼食の金を惜しみ、小銭で酒を飲む。最初は軽くと思いながら、もう一杯もう一杯と安酒を飲み続け、いつの間にか限度を越してしまう。 電車に乗った途端、意識を失い、高鼾で乗り過ごす。とんでもない…