女心と秋の空

「弱々し心も愛しぬるき酒」牧童

僕が子供の頃、冬に冷たいものを口にする機会は少なかった。小学5年生の頃、親の反対を押し切ってアイスのクリスマスケーキを買ってもらい、感動したことがある。冬にアイスを食べるのは画期的な出来事だったのだ。

現代人の心と身体は熱を帯びてきたのだろうか。冬でも冷たい飲み物を好む。燗を楽しむ人は少なくなった。僕だって年間通して冷たい酒が多い。

季節の変化を舌と身体と心で感じていきたいものだ。

秋風が吹けば酒はぬる燗、人肌燗が恋しくなる。弱々しくなった心をぬるい酒が優しく包み込んでくれる。だから弱い自分を責めずに許し、あきらめ、優しい眼で自分を眺め、虫の声を聴く。こんな暮らしに僕は憧れている。

さて、恋心にも季節変化があるのだろうか。
過去を振り返ると、秋に出会った女とは肉体関係に至るきっかけが見つけにくく、淡い想いを残して消えてしまうことが多かったような気がする。

秋は別れが多い季節ですか?

季節に関係なく、別れはいつでも突然やってくるけどね。