火の用心

「靴下の穴繕わず餅を焼く」牧童

命が無惨に失われていく。命の大切さを多くの人々が語る一方で、NHK大河ドラマでさえ殺しあい、奪い合い、晒し首を良しとしていた時代を映し出す。相変わらずアニメも派手な闘いを描き出す。殺しあうのは本能なのだろうか。

痛ましい報道が多い中で、冬場に一人暮らしの老人が焼け死ぬというニュースが毎年流れる。このニュースを聞きながら僕は餅を焼いていた。昔のように火鉢ではなく、オープントースターで焼いていたら真っ黒に焼きあがった。
焼死なんて哀しすぎるなと、僕はつぶやいてみた。

久しぶりに実家を訪れた僕のために、90歳を過ぎた母が鯛を焼いてくれた。焼いていることを忘れてしまい、真っ黒に焦がしてしまった。
途中で気付いた母は慌てて鯛を取出したものの、焦げた鯛に夢中になり、ガスを消し忘れていた。
老いたら火のない暮らしがいいのだろうな。
でもね、炎って心に沁みるし、火鉢の時代も良かったんだよね。
日本人が戦争をしていた時代を僕は知らないけど、火のある暮らしを生きてきたから、火は好きなんだけどな。