食いねぇ、食いねぇ、肉食いねぇ

「欲あれど老いてほそぼそ秋の食」
牧童

先日、ふらりと入った大衆酒場でひとりで飲んでいた。
店では、しゃぶしゃぶ食べ放題キャンペーンをやっていて、さらに追加料金を払えば飲み放題にもなる。一人でもいいそうで、僕なら充分にもとはとれる金額だ。
でも…
一人じゃ寂しいから、カウンターで単品メニューで飲んでいた。

やがてテーブル席も満席となり、カウンターの僕の右隣りに大学生風の男三人、左隣りに若いカップルが座り、食べ放題飲み放題のコースをオーダーした。

学生三人のうち一人は飲めないらしい。飲めない人がいても、飲み放題にするためには三人分の金を追加しなくてはならない。飲めるらしい男の熱い説得により、飲み放題に決定した。

男はこうでなくてはいかん。

まずは二人が生の小ジョッキー、一人はウーロ茶で乾杯。次にビールだった一人が2杯目からウーロン茶に変更。ウーロンハイじゃなくてウーロン茶だぜ。酒が強いとほざいていたやつの飲み方も変だった。カクテルをなめながら、しゃぶしゃぶを食っていた。三人の食べるスピードも遅いし、量も少ない。

まあいいけど、しゃぶしゃぶ食べ放題、飲み放題にすればよかったかなと後悔しながら、僕は3杯目の大ジョッキーを一気に飲み干す。

もう一方のカップルときたら馬鹿女が、しゃぶしゃぶがセットされる前にあれもこれもおいしそうだと単品料理を追加注文。これじゃしゃぶしゃぶ食べ放題の最初の一皿も完食しないだろう。

あ~あ
もったいない!

僕なら一人でこの5人より食って飲んだだろうに。

老いとともに食が細くなり、酒も弱くなってきた。最近こんな心境なのに、意識の奥底ではまだまだ若さも馬鹿さも残っているようだ。