#短歌

題詠短歌 秋雨の旅

071:封 架け橋はネオンの雨に封鎖され 心通わぬ群れに漂う 072:レンタル レンタルの恋を返してひとり旅 氷雨の橋で濡れているだけ 073:羅 この橋も貴女も雨も紅葉も 風も別れも森羅万象 074:這 橋を這う枯葉は残り氷雨打つ 老いたこの身も濡れては揺れて 075…

題詠短歌 流れる涙

091:厄 厄年の厄を払えず老いにけり 肌の風花なかなかとけず 092:モデル 刻々と風貌老いて風に立つ 枯れ木の横でモデル気分で 093:癖 いつのまについてしまった泣き癖に 雪の風にも流れる涙 094:訳 隙間風吹き込む訳のない部屋で いつもヒューヒュー寒々家族…

題詠短歌 今年も静か

086:火 空っ風こころも乾き強き酒 飲み干し口説く火事場のように 087:妄 霜風が妄想までも凍てつかせ ひとり芝居は愛から憎へ 088:聖 しみじみと甘さ噛み締めシュトーレン 聖夜の風は今年も静か 089:切符 かじかんだ手で切符買い会いたくて 筑波おろしの貴女…

題詠短歌 笑顔に変わる

081:徐 心地よく凍てつく風を肌に受け 徐々に蝕む怒り忘れて 082:派 風強く雪に埋もれて派手に泣く つもりが地味な笑顔に変わる 083:ゆらゆら 北風に別れ話は後にして ゆらゆら肩を並べてホテル 084:盟 鴎盟の齢になれども風の海 女恋しや鴎よりかは 085:ボ…

題詠短歌 今は言えない

076:殿 寒風や離婚に進む妻からの 宛名が殿に変わったあの日 077:縛 木枯らしが呪縛のごとく言葉さえ 奪い好きだと今は言えない 078:邪魔 凍て風が邪魔して仲を切り裂いた 曝け出せない厚着のせいで 079:冒 吹雪く夜は感冒さえも肴とし クシャミ鼻水お酒三合…

題詠短歌 髪をゆだねて

071:バッハ 並ぶ背を押す秋風と入る茶店 バッハ流れて動かぬカップ 072:旬 煙立ち八重の潮風旬を食む 昔の恋の苦味を舌に 073:拗 僻むには恵まれすぎて拗ねるには 若さ不足の秋の月風 074:副 副菜で夕餉済ませたほろ酔いは 風に満たされ月十三夜 075:ひたむ…

題詠短歌 また君がいる

066:郷 旅ふたり萩の上風吹く郷の 石段登り神への祈り 067:きわめて 旅一夜風の流れをみきわめて 歩めばそこにまた君がいる 068:索 暗索のビール飲みほし空き缶を 手に持ったまま風と虫の音 069:倫 人妻のためらい歩く裾風に 倫理の壁は脆く崩れて 070:徹 窓…

題詠短歌 紅葉渓谷

056:釣 釣り人は動かぬままにただ一人 風も色づく紅葉渓谷 057:おかえり おかえりの笑顔懐かし行くあてを 探しあぐねて悲風のベンチ 058:核 核心をつく人を避けシェルターの 無風の闇で傷を癒して 059:埃 一枚の枯葉と埃はき出せば 風に乗れないままに消え失…

題詠短歌 変わらぬ想い

051:曇 風吹けば青空増すか秋曇り 老いた二人の不倫の旅路 052:路 家路失せ旅路の日々に秋の風 帰る家には帰らぬままに 053:隊 少女らの手足眩しや鼓笛隊 風に恥じらう横しまな道 054:本音 風見鶏ボクの本音とはにかんで また嘘をつく風の吹くまま 055:様 様…

題詠短歌 スマホの恋は

046:比 比べてもせんないことと罪びとは 欲するままに闇夜の嵐 047:覇 何ひとつ制覇できずに荒れ果てた 庵にひとり嵐のあとに 048:透 朝凪のさらに透けゆく海まぶし 濁り重ねた眠れぬ二人 049:スマホ 暗闇のメールを終えて朝戸風 夢かうつつかスマホの恋は 0…

題詠短歌 貴女にメール

041:症 小夜嵐時計も窓もうるさくて 不眠症の貴女にメール 042:うたかた 土用東風ふたり歩めば心地よく うたかたなれど刻む思い出 043:定 お互いに否定ばかりの夫婦より 風に包まれ首肯く君と 044:消しゴム 熱風に消しゴム歪みあがけども 消したい過去は汚れ…

題詠短歌 夜の嵐に

036:甲斐 あれやこれ甲斐ないことと知りながら また文を書く夜の嵐に 037:難 暴風の激しさ増せば闇ひとり 避難できずに静けさを増す 038:市 だみ声の活気あふれる魚市場 隅の汚物に気づく悪風 039:ケチャップ 青嵐に揺れる川辺のバーベキュー ケチャップつけ…

題詠短歌 心も素肌

031:知 家風(いえかぜ)という言葉知り振り向けば 帰ってくるなと風力を増す 032:遮 辰巳風この先行きも遮断され ふたりの闇で荒れては涙 033:柱 風死して焼けど開かぬ貝柱 別れ話を切り出せぬまま 034:姑 姑息さをまた身につけて海風の 不倫の旅は夫婦のよ…

題詠短歌 君の名を呼ぶ

026:干 青田風やがては苗は実るけど ふたりが歩む干ばつの恋 027:椿 色風にふと見上げれば夏椿 遠く儚いあの頃の恋 028:加 涼風の一夜の旅を添加する 熟した恋が腐らぬように 029:股 河原風いっそこのまま股旅に 貴女は帰る家があるけど 030:茄子 焼き茄子が…

題詠短歌 惹かれる心

021:祭り 凱風の幸の気配に振り向けど 後の祭りか妻子は捨てた 022:往 涅槃西ふくらむ想い伝えてよ 往生際が悪い恋でも 023:感 夕東風の宴早々切り上げて 貴女の肌を感じあいたい 024:渦 ながながの離婚渦中に春疾風 貴女と風と共に去りたい 025:いささか い…

題詠短歌 風に捨てたい

016:捨 心にも春一番よ早く来い 消えぬ憎しみ風に捨てたい 017:かつて 穀風にかつての夢を思い出す 仲良く暮らす男と女 018:苛 諍いをまた積み重ね家を出る 苛立ち鎮め吸う花信風 019:駒 どことなく父に似てきた若駒が 走り去る風ふりむきもせず 020:潜 雪解…

題詠短歌 風と生きたい

011:億 億万の富より君と密やかに 梅の香りの風と生きたい 012:デマ 薫風に立つ君に告げ目をそらす 家族の愚痴は哀しみのデマ 013:創 君の名をこの光風につけて呼ぶ 詩人みたいに恋の創作 014:膝 花吹雪ひとひら膝に留まりて 微笑む酌に老いらくの恋 015:挨…

題詠短歌 貴女のもとへ

006:統 家族さえ統率できず家を出る 春風に乗り貴女のもとへ 007:アウト 東風吹けば抱きしめたくて逢いたくて キスで伝えるアウトウレシイ 008:噂 春風に噂話の花が咲く あちらこちらで不倫不倫と 009:伊 我が家では嫌われ者も君となら 伊達男だね清風の旅 0…

題詠短歌 逃避の風を

001:入 ルー入れる前に炒める匂い経て 春呼ぶ風がカレーに変わる 002:普 今までは全て普通の親と子の 春の臭いを嵐が変えた 003:共 この道を共に歩むかそれぞれが 春いちばんに心託すか 004:のどか のどかなる季節になれど喉絡む 言葉出せずに目に入る埃 005…

風になる母

『風になる母 百首』 秋人 この年の題詠は、母の死と風をテーマに百首をつくってみた。題詠は与えられたお題の順に投稿していくため、さすがに時の流れに沿った形でつくることができなかったので、再編してみた。時の流れは早く、母の死後、数年の風が吹き抜…

2015年題詠短歌100

001:呼 亡き今は枯葉の風も追うように われ呼ぶ母の声に聴こえて 002:急 いつか来る死とは思えど急だった そんな気がする風になる母 003:要 人生の要の時はいつだって 母がいたはず微風の中に 004:栄 栄え失せ焼夷の風を逃げまどい 平和に飢えた母の青春 005…

孤独みたいに

096:賢 死ぬ母は良妻賢母だったのか 風に聞いても笑われただけ 097:騙 臨終の母を優しく包む風 騙されたのか騙したがわか 098:独 死ぬときは母も一人で風哀し 慕われながら孤独みたいに 099:聴 風に聴く死後の世界の母は今 何を想いて何を哀しむ 100:願 風の…

死神の風

091:略 侵略の焼土の風に涙した 母に病魔がまた攻略を 092:徴 風雲よ漸く母は徴兵で 惨殺された伯父のもとへと 093:わざわざ わざわざとニヤリ顔出しまた消える 母の枕辺死神の風 094:腹 母の死期僕を宿した腹だけが 風船みたく膨らんでいた 095:申 最後まで…

母に寄り添う

086:珠 風誘う珠数玉ひろい手づくりの 母の思い出今日は葬式 087:当 訳もなく当たり散らした反抗期 風にも涙母なき今は 088:炭 樫焼けば備長炭に母焼けば 風に舞う骨もろく崩れて 089:マーク 病床の風が付けたかデスマーク 窶れた母の腕にポツリと 090:山 山…

幼き日々へ

081:付 付きまとう死神の風臭気増し 母微笑めどまた苦しげに 082:佳 佳麗なる母の面影いまはなく 風にかわいた涙やつれて 083:憎 母憎む思いは確かあったけど 風よ帰ろう幼き日々へ 084:錦 母望む錦飾れず風なびく 喪服姿で母の遺影を 085:化石 積年の汚れを…

損した気分

076:舎 病舎には快適な風ながれても 横たう母に死の臭いして 077:等 死も風も平等なのに母の死は 自分ひとりが損した気分 078:ソース 母偲び名店のカツ買い求め ソースたっぷりかけても哀し 079:筆 達筆な母の最後のメモ帳は 風に乱れたようで読めない 080:…

こがらし吹けば

071:粉 粉々に火葬の骨は崩れ散り 熱風に母は揉まれて消えた 072:諸 生前の母を騙した諸々を 詫ぶ独り言こがらし吹けば 073:会場 「ママはどこ?風が寒い!」と探す父 母の葬儀の会場なのに 074:唾 唾棄すべき男を母は息子ゆえ 風の香りで守って死んだ 075:…

窓打つ風雨

066:缶 薫風を味わいながら缶ビール 母が死に行く病室なのに 067:府 冥府から母の誘いが来るを待つ 午前三時の窓打つ風雨 068:煌 棺には風は届かず煌めきを 増すは花だけ母は死顔 069:銅 母偲ぶ涙が銅を腐蝕させ あの風色が版画のように 070:本 母看取る僕の…

朝風乱れ

061:宗 葬儀社に宗派伝えて慌ただし 母臨終の朝風乱れ 062:万年 生前の母が育てた万年青らも 秋風のなか雑草となる 063:丁 母の死後知る本籍は二丁目で 僕が知らない風が吹く街 064:裕 裕然と死を待つ母を茫然と ただ眺めては風も忘れて 065:スロー 死に至る…

古きアルバム

056:リボン リボン付け袴の母が風に立つ 子を産む前の古きアルバム 057:析 涙から析出されぬ悲しみは 風に消えたか母の納骨 058:士 友同士語り広がる風聞は 母とは別の女の葬儀 059:税 形見分け清貧風に色あせた 税がかからぬ母の通帳 060:孔雀 母の死後母に…