題詠短歌2017年

題詠短歌 秋雨の旅

071:封 架け橋はネオンの雨に封鎖され 心通わぬ群れに漂う 072:レンタル レンタルの恋を返してひとり旅 氷雨の橋で濡れているだけ 073:羅 この橋も貴女も雨も紅葉も 風も別れも森羅万象 074:這 橋を這う枯葉は残り氷雨打つ 老いたこの身も濡れては揺れて 075…

題詠短歌 朝陽を添えて

096:まこと 酔いさめて まことに寒し夜半の風 酒より欲しい温もりの肌 097:枠 窓枠に風が描いた雪景色 凝縮された朝陽を添えて 098:粒 大粒の牡蠣を噛み切り吟醸酒 美味なる風が胃の中に吹く 099:誉 名誉とは無縁の日々の誉酒 美味さに勝る喜びはなし 100:尽…

題詠短歌 流れる涙

091:厄 厄年の厄を払えず老いにけり 肌の風花なかなかとけず 092:モデル 刻々と風貌老いて風に立つ 枯れ木の横でモデル気分で 093:癖 いつのまについてしまった泣き癖に 雪の風にも流れる涙 094:訳 隙間風吹き込む訳のない部屋で いつもヒューヒュー寒々家族…

題詠短歌 今年も静か

086:火 空っ風こころも乾き強き酒 飲み干し口説く火事場のように 087:妄 霜風が妄想までも凍てつかせ ひとり芝居は愛から憎へ 088:聖 しみじみと甘さ噛み締めシュトーレン 聖夜の風は今年も静か 089:切符 かじかんだ手で切符買い会いたくて 筑波おろしの貴女…

題詠短歌 笑顔に変わる

081:徐 心地よく凍てつく風を肌に受け 徐々に蝕む怒り忘れて 082:派 風強く雪に埋もれて派手に泣く つもりが地味な笑顔に変わる 083:ゆらゆら 北風に別れ話は後にして ゆらゆら肩を並べてホテル 084:盟 鴎盟の齢になれども風の海 女恋しや鴎よりかは 085:ボ…

題詠短歌 今は言えない

076:殿 寒風や離婚に進む妻からの 宛名が殿に変わったあの日 077:縛 木枯らしが呪縛のごとく言葉さえ 奪い好きだと今は言えない 078:邪魔 凍て風が邪魔して仲を切り裂いた 曝け出せない厚着のせいで 079:冒 吹雪く夜は感冒さえも肴とし クシャミ鼻水お酒三合…

題詠短歌 髪をゆだねて

071:バッハ 並ぶ背を押す秋風と入る茶店 バッハ流れて動かぬカップ 072:旬 煙立ち八重の潮風旬を食む 昔の恋の苦味を舌に 073:拗 僻むには恵まれすぎて拗ねるには 若さ不足の秋の月風 074:副 副菜で夕餉済ませたほろ酔いは 風に満たされ月十三夜 075:ひたむ…

題詠短歌 また君がいる

066:郷 旅ふたり萩の上風吹く郷の 石段登り神への祈り 067:きわめて 旅一夜風の流れをみきわめて 歩めばそこにまた君がいる 068:索 暗索のビール飲みほし空き缶を 手に持ったまま風と虫の音 069:倫 人妻のためらい歩く裾風に 倫理の壁は脆く崩れて 070:徹 窓…

題詠短歌 土に帰れず

061:虎 虎の威を借りても弱し秋風は 爽やかなれど隠せぬ涙 062:試合 運動会はためく風も静まりて 試合結果を待つ童らは 063:両 片手なら繋げたものの風ゆらり 両手で抱けずネオンも揺れて 064:漢 風という漢字の中にいる虫の 音が変わりゆく秋の夕暮れ 065:…

題詠短歌 紅葉渓谷

056:釣 釣り人は動かぬままにただ一人 風も色づく紅葉渓谷 057:おかえり おかえりの笑顔懐かし行くあてを 探しあぐねて悲風のベンチ 058:核 核心をつく人を避けシェルターの 無風の闇で傷を癒して 059:埃 一枚の枯葉と埃はき出せば 風に乗れないままに消え失…

題詠短歌 変わらぬ想い

051:曇 風吹けば青空増すか秋曇り 老いた二人の不倫の旅路 052:路 家路失せ旅路の日々に秋の風 帰る家には帰らぬままに 053:隊 少女らの手足眩しや鼓笛隊 風に恥じらう横しまな道 054:本音 風見鶏ボクの本音とはにかんで また嘘をつく風の吹くまま 055:様 様…

題詠短歌 スマホの恋は

046:比 比べてもせんないことと罪びとは 欲するままに闇夜の嵐 047:覇 何ひとつ制覇できずに荒れ果てた 庵にひとり嵐のあとに 048:透 朝凪のさらに透けゆく海まぶし 濁り重ねた眠れぬ二人 049:スマホ 暗闇のメールを終えて朝戸風 夢かうつつかスマホの恋は 0…

題詠短歌 貴女にメール

041:症 小夜嵐時計も窓もうるさくて 不眠症の貴女にメール 042:うたかた 土用東風ふたり歩めば心地よく うたかたなれど刻む思い出 043:定 お互いに否定ばかりの夫婦より 風に包まれ首肯く君と 044:消しゴム 熱風に消しゴム歪みあがけども 消したい過去は汚れ…

題詠短歌 夜の嵐に

036:甲斐 あれやこれ甲斐ないことと知りながら また文を書く夜の嵐に 037:難 暴風の激しさ増せば闇ひとり 避難できずに静けさを増す 038:市 だみ声の活気あふれる魚市場 隅の汚物に気づく悪風 039:ケチャップ 青嵐に揺れる川辺のバーベキュー ケチャップつけ…

題詠短歌 心も素肌

031:知 家風(いえかぜ)という言葉知り振り向けば 帰ってくるなと風力を増す 032:遮 辰巳風この先行きも遮断され ふたりの闇で荒れては涙 033:柱 風死して焼けど開かぬ貝柱 別れ話を切り出せぬまま 034:姑 姑息さをまた身につけて海風の 不倫の旅は夫婦のよ…

題詠短歌 君の名を呼ぶ

026:干 青田風やがては苗は実るけど ふたりが歩む干ばつの恋 027:椿 色風にふと見上げれば夏椿 遠く儚いあの頃の恋 028:加 涼風の一夜の旅を添加する 熟した恋が腐らぬように 029:股 河原風いっそこのまま股旅に 貴女は帰る家があるけど 030:茄子 焼き茄子が…

題詠短歌 惹かれる心

021:祭り 凱風の幸の気配に振り向けど 後の祭りか妻子は捨てた 022:往 涅槃西ふくらむ想い伝えてよ 往生際が悪い恋でも 023:感 夕東風の宴早々切り上げて 貴女の肌を感じあいたい 024:渦 ながながの離婚渦中に春疾風 貴女と風と共に去りたい 025:いささか い…

題詠短歌 風に捨てたい

016:捨 心にも春一番よ早く来い 消えぬ憎しみ風に捨てたい 017:かつて 穀風にかつての夢を思い出す 仲良く暮らす男と女 018:苛 諍いをまた積み重ね家を出る 苛立ち鎮め吸う花信風 019:駒 どことなく父に似てきた若駒が 走り去る風ふりむきもせず 020:潜 雪解…

題詠短歌 風と生きたい

011:億 億万の富より君と密やかに 梅の香りの風と生きたい 012:デマ 薫風に立つ君に告げ目をそらす 家族の愚痴は哀しみのデマ 013:創 君の名をこの光風につけて呼ぶ 詩人みたいに恋の創作 014:膝 花吹雪ひとひら膝に留まりて 微笑む酌に老いらくの恋 015:挨…

題詠短歌 貴女のもとへ

006:統 家族さえ統率できず家を出る 春風に乗り貴女のもとへ 007:アウト 東風吹けば抱きしめたくて逢いたくて キスで伝えるアウトウレシイ 008:噂 春風に噂話の花が咲く あちらこちらで不倫不倫と 009:伊 我が家では嫌われ者も君となら 伊達男だね清風の旅 0…

題詠短歌 逃避の風を

001:入 ルー入れる前に炒める匂い経て 春呼ぶ風がカレーに変わる 002:普 今までは全て普通の親と子の 春の臭いを嵐が変えた 003:共 この道を共に歩むかそれぞれが 春いちばんに心託すか 004:のどか のどかなる季節になれど喉絡む 言葉出せずに目に入る埃 005…