題詠短歌 2013年1

さまざまな色

096:季節 変わりゆく季節を浴びて恋の路 春夏秋冬さまざまな色 097:証 歳月が愛を育む確証は 会えば会うほどさらに遠のく 098:濁 濁流が緩やかになり上澄みが 清流となる老後目指して 099:文 恋愛は文字がなければ絵にならず 別れも文字で色塗りながら 100:…

斜塔のように

091:鯨 ホエールズはDeNAに移り行き 鯨が消えてゲーム時代に 092:局 破局した夫婦のままで時を積む 傾斜を増した斜塔のように 093:ドア ドア叩き助け求めて泣き叫ぶ 自分で鍵をかけているのに 094:衆 群衆の中の一人と知りながら 君と僕との二人の世界 095:…

溜息の朝

086:ぼんやり ぼんやりと日向ぼっこをするように 暮らせる伴侶いまだ出会えず 087:餅 青黴の餅懐かしや黴生えぬ 時代の日々は変化なきまま 088:弱 還暦の齢重ねて弱々し 朝な夕なに冷えゆく机 089:出口 目の前に楽に通じる出口あり なおも争い留まる二人 090…

青春の下駄

081:自分 流されて自分らしくは生きれずに それが自分と気づく黄昏れ 082:柔 柔らかく人に接する難しさ 闇夜にひとり朝までひとり 083:霞 行く道は闇に阻まれ来た道は 霞の奥でうごめく涙 084:左 右顧左眄一日終えて懐かしむ 右往左往の青春の下駄 085:歯 幻…

傘もささずに

076:納 この雨に納得できるわけもなく ただ怖いだけ傘もささずに 077:うっすら うっすらと心に積もる日常が 春を遠ざけ夢を凍らす 078:師 魚偏に師を並べれば鰤になる 女に師ならブスと読むのか 079:悪 いつだって悪いのは僕さようなら 雲を追いかけ生きてい…

還暦を過ぎ

071:得意 得意げに語り明かした若き日の 人生論とは異なる老後 072:産 七五三着飾る子等の微笑みに 面影残す産声の笑み 073:史 殺戮の歴史を閉じて戦争を 知らない子らも還暦を過ぎ 074:ワルツ 飲むほどにワルツのように酔いが舞う 今宵の君はとても綺麗だ 0…

見捨てた僕に

066:きれい いつまでも二言だけで暮らせたら 憎みはしまい「おいしい・きれ い」 067:闇 静寂に耳傾けて闇の音 まだ生きている自分を殺し 068:兄弟 ぶたれても兄にすがるか幼子よ 兄弟喧嘩にイジメの縮図 069:視 視線など逸らしてしまえ逸らしても 僕には見…

哀しき笑顔

061:獣 あの時の野獣の痛み消えた今 人間みたく哀しき笑顔 062:氏 いつの日か摂氏零度に戻せたら 凍てつく家を水に流そう 063:以上 さようなら イルミネーションこれ以上 涙の中で凍らす前に 064:刑 流刑地にたどり着けずに彷徨えば たどり着けずにたどり着…

堕落した屁も

056:善 欲望も野望も消えて善人に なったはずだが声は悪人 057:衰 衰退ははたから見れば醜態に 映るものらし堕落した屁も 058:秀 いよいよか寿命近づく蛍光灯 秀という字が無縁な部屋で 059:永遠 永遠の恋などないとだらだらと 争いながら終わる一日 060:何 …

最終電車

051:般 一般の席に座れず押し出され 見えぬ舞台の光と影と 052:ダブル シングルをダブルに変えてバーボンの 覚めゆく夢の濃度を少し 053:受 今日もまた受付時間終了 天国行きの最終電車 054:商 飽きないで恋の買い手がつくまでは 商いならば帰れぬ日暮れ 055…

消え去る時間

046:間 書棚増え埋め尽くされた空間に 満たされぬまま消え去る時間 047:繋 沈澱の言葉うごめき繋ぎあい 意味をなさずにさらにもつれて 048:アルプス アルプスをテレビで見てた君が呼ぶ ねぇ買ってきて!食べよモンブラン 049:括 カケるより括弧つければタス…

甘味の中で

041:カステラ カステラに口つけぬまま見つめあう すでに二人は甘味の中で 042:若 若さゆえ許されていたあの癖の ままで二人に深まる亀裂 043:慣 慣性で完成できぬ感性は 陥穽におち閑静な街 044:日本 日本語で愛と憎しみ哀しみさえも 表現できずウムとつぶや…

糠漬けの味

036:少 少しだけ嫌いになったあの日から 少しは好きに変わる歳月 037:恨 おそらくは恨みを飲んでいた母の 塩がきつめの糠漬けの味 038:イエス 遮断され呼べど戻らぬイエスタディ 今日から一人またとぼとぼと 039:銃 銃弾に当ったみたく心死す 笑いの中のその…

鬼になるだけ

031:はずれ 君が住む街をはずれて振り返る 二度と戻らぬ旅人みたく 032:猛 猛獣と呼ばれるゆえに猛々し 哀しみ唄う泣き声さえも 033:夏 夏野菜たっぷり入れてぐつぐつと 煮込むカレーを待てずにビール 034:勢 子供らの勢い消えて雑然と 静まり猫がいるだけの…

慈恩に満ちて

026:期 いつまでも待機していた期待たち 涙になれず気体になった 027:コメント 一行のコメント残し捨てる部屋 受信つぎつぎ削除しながら 028:幾 交わらぬままに描いた恋ごころ 荊みたいな幾何学模様 029:逃 昨日から今日へ明日へと逃げていく そのわけなどは…

酔いもまだらに

021:仲 仲直り子供みたくはできぬまま 仲直りせず続く日常 022:梨 並ぶ梨長十郎の姿なく 幸水豊水みずっぽい日々 023:不思議 この人と出会い今なお別れずに 吐息ばかりの不思議な暮し 024:妙 吐き出せぬ言葉巡りて苦々し 微妙な酒に酔いもまだらに 025:滅 幻…

汗のシルエット

016:仕事 不器用な時を費やし手仕事で 建てて壊して築けぬ家庭 017:彼 彼方から走り近寄る幸福は 不幸の果実手土産にして 018:闘 団欒のテーブル下の暗闘は 離婚届けを隠し今夜も 019:同じ くっきりと境界線が示す仲 同じベッドに汗のシルエット 020:嘆 感嘆…

失う言葉

011:習 愛し合う習慣薄れ憎みあう 時を重ねて失う言葉 012:わずか もう二度と帰らぬ家を見渡せば わずかに残る梅酒梅の実 013:極 恋に酔い極彩色の眩暈より 朝一杯のフレッシュジュース 014:更 衣更えオードトアレも新しく 恋の匂いに温もり増して 015:吐 吐…

別れを避けて

006:券 風に舞う馬券どこ行く踏まれても 拾われもせず取り残されて 007:別 別れては新たな恋に燃えた過去 今は怠惰に別れを避けて 008:瞬 時経れば嫌という字を重ね塗る 瞬時芽生えた恋の絆に 009:テーブル 黙すればさらに隔たる広がりに カップ二つを乗せた…

あの日のように

001:新 あれこれと新手の口説き試しても 落とせぬ君が泣いたあの時 002:甘 老いてなお甘え心は消えもせず 甘えさせてよあの日のように 003:各 各々の顔も心も異なれど また忍び寄る恋の終焉 004:やがて やがてくる別れの音に窓は揺れ 振り向かぬまま去りしあ…