短歌

雨がささやく

悶々と欲していたはずあの夏を 思い出せずに明けない夜明け 居並べど仏の道は程遠く 地獄へ来いと雨がささやく 涙枯れ汗に汚れた春衣 裸になろう着替えするより いつの間にまた紫陽花が色を増す も一度君にメールしようか 君のこと思い出したら心地よい 風に…

ただの木になる

寒き朝閨の想いが溶け込んだ 湯湯婆の湯で笑顔を洗う 湯湯婆は役目を終えて冷え冷えと 春に消された老婆の骸(むくろ) 閉ざされた地中の闇も春めいて 顔を出しましょ土筆みたいに 口紅の色淡くして待つ君に 風より先に春の口づけ ありがとう。そうつぶやい…

また髑髏(されこうべ)

逢えぬまま凍え紡ぎし長き夢 縺れぬように待ち侘びた春 今日よりも更に明日は日脚伸ぶ この手も少し君へと伸ばす 花冷えや人肌恋し今はただ 愛より君をまずは抱きたい 冬の間の夢はふくらみ春に咲く 心許して緩まる身体 膝に乗る猫も愛しや春の雨 病んだ心の…

蕾のままで

わざわざと冷たい家に帰るより 朝まで酔えば雪さえ温し 飲むほどに帰りたくない雪降れば 帰らない家帰れない道 改札でゆくえ決まらず凍える手 このままいっそ旅に出ようか 歴史的大雪降りし東京を 雪を求めて来た宿で知る 誰がための歌声なるか知らねども 愛…

背徳の言葉

追憶にふければ老けるばかりなり 恋を追いたい童のように カリヨンの音鳴り止みて聴こえくる 過去と未来に怯える鼓動 東京に積もらぬ雪が降る夜に ふりもふられもせず募る恋 あの人の肩にとまりし淡雪も 名を呼ぶ声も儚く消えて 凍死した心を乗せた手のひら…

白い溜息

名を呼べど来そうで来ない人の犬 鎖はすでに切れているのに 抱きたいと思いつのらせ夢うつつ 目覚ましさえも吐息のように 君住むはここらあたりか氷雨濡れ 君を求めて震える心 逢いたいと想えど逢えぬ夜の雪 名をつぶやけば白い溜息 焼鳥の煙ばかりがかさを…

一夜の風に

落葉とて重ね眠れば温温と わが身枯れても夢はさめまじ 逢いたさの想い積もりて窓を開け 凍てつく闇に君の名を呼ぶ 熱燗で冷えた心は癒されず 微笑む君の温もり恋し 同床の望みかなわぬ歳月に 二人幾度も見た同じ夢 昨日まで気づかぬ恋を今朝に知り 今年こそ…

短歌

難病に若さを棄てた身をさらし抱っこ抱っこと甘えてくる娘 僕よりは遥かに若い娘のからだ僕より先に消えるいのちか 痛いのはわかっていてもどうしてももっと不幸に泣かせたくなる

短歌

冬ならば人肌恋し花冷えは恋の心も咲かず閉ざして 寒き朝走り過ぎ去る童らは異常気象の春と知らずに 満月を告げる貴女が眩しくてもっと闇夜に隠れていたい 今ならば嫌いになれると月映る窓を閉ざして君がつぶやく

短歌

■思うまま変われぬ我を許し観る我に変わりてまた初詣 ■過ぎ去りし日々の重さを軽くして気軽に交わすキスの冷たさ ■春光の中で揺れてる微笑みも昨日よりかは温もりを増し ■子らのよに留まることを知らぬらし君の心に追いつけぬまま