蕾のままで

わざわざと冷たい家に帰るより
朝まで酔えば雪さえ温し

飲むほどに帰りたくない雪降れば
帰らない家帰れない道

改札でゆくえ決まらず凍える手
このままいっそ旅に出ようか

歴史的大雪降りし東京を
雪を求めて来た宿で知る

誰がための歌声なるか知らねども
愛しき想い聴くたびに増し

ローレライ幾千の舟沈むとも
この歌声は我を呼ぶもの

棲む鳥が戻らぬままの鳥籠に
歌声偲ぶ春の曙

愛ゆえに失うよりはオンディーヌ
肉欲の火で水蒸気になれ

ふくれたり縮んだりしてトラウマは
咲かず枯れずに蕾のままで

砂浜に温もり見つけ恋と書く
春は逃げずに波のまにまに