題詠短歌 2012年

題詠短歌 2012年

096:拭 積年の塵窓拭けば流れ落つ涙の空は過去から碧へ 097:尾 尻尾振る犬になれずに振る首は縦か横かと迷う夕暮れ 098:激 激しさを増す波の音に雨音に想いの音はやがて静かに 099:趣 趣を変え墓に咲く彼岸花三回忌終え心も乾き 100:先 まだ先と我が身騙して…

題詠短歌 2012年

091:締 人生の締切間近ドタバタと逃げればさらに死が迫りくる 092:童 牧童は哀しからずや羊らの汚れに染まり臭い漂う 093:条件 生と死の条件提示に闇は揺れふざけんなよと怒声飛び交う 094:担 惑う子に手を差し伸べる我が身さえ担えきれずによろめきながら 0…

題詠短歌 2012年

086:片 冷えた手で熱い涙を注ぐ酒欠片みたいな人生だけど 087:チャンス パン食いの競争みたく愚弄するチャンスよりかは空が美し 088:訂 婚姻と離婚の印で記された訂正印を押せない戸籍 089:喪 いつの間に恋する資格喪失し老いて再び恋愛講座 090:舌 秋ひとり…

題詠短歌 2012年

081:秋 もう一本手酌の酒を熱くする一人寂しく深まる秋は 082:苔 舌苔を鏡に映す変な顔最後のキスを思い出せずに 083:邪 道標気にせず進め邪道でも人それぞれに傷めた足で 084:西洋 西洋の風に吹かれて東洋の雨に打たれてこの島に死す 085:甲 もの書けば亀甲…

題詠短歌 2012年

076:桃 適熟を待たずに傷む桃を食む 熟する前に傷みし君と 077:転 突然の転落速度に目を覚まし鳥は慌てて羽ばたく素振り 078:査 欲という罪人を追い捜査中ソドムのような心の奥を 079:帯 帯解けば昔懐かしい匂いして何もせぬままあの日を偲ぶ 080:たわむれ …

題詠短歌 2012年

071:籠 飛び出せば生きてはいけぬ狭き籠今のままでは暮らせぬ二人 072:狭 またひとつ静かに消えた選択肢狭き道行く行き止まりまで 073:庫 思い出を詰め込み過ぎた倉庫なら燃やしてしまえ回顧などせず 074:無精 指先に生きる痛みを伝えつつ無精髭がまた少し伸…

題詠短歌 2012年

066:息 微笑みの息を弾ます息子らと息を合わせて駆け上る坂 067:鎖 切り取れぬ連鎖の罠と知りながら死への近道生き残るため 068:巨 酔うほどに隠せぬ想い捨てに出る巨大化してる向日葵の下 069:カレー こびりつく鍋底の日々削ぎ落とす作り置きしたカレーまみ…

題詠短歌 2012年

061:企 企てに翻弄されて企てる惚れた素振りの脱げない服で 062:軸 基軸さえ狂い始めて早や三年行くも帰すもままならぬまま 063:久しぶり 久しぶり見上げる月にかかる雲ながれる時にひとり佇む 064:志 何時の間に流れ流され朝靄に包まれ消えた志す道 065:酢 …

題詠短歌 2012年

056:晩 毎晩の酒と寝床に逃避してひとり夢見る明日への希望 057:紐 何時の間にたまりし紐を納めたる開かずの缶は錆びついたまま 058:涙 明日までと走り疲れて闇の道涙よりかはひと汗かいて 059:貝 荒海の貝殻二枚合わせても二度と出会えぬジキルとハイド 060…

題詠短歌 2012年

051:囲 越せそうな低い囲いの中なのに卑屈に笑う飼犬になる 052:世話 世話という言葉の中の虐待に愛はあるのか死に行く命 053:渋 渋々と生きる命も何時の日か渋さを増して生きる命か 054:武 武力では奪える命愛あれど救えぬ命川に流して 055:きっと このまま…

題詠短歌 2012年

046:犀 泥水と犀戯れて何想う生きることとは犀のごとしか 047:ふるさと ふるさとを持たぬ男の望郷はまだ見ぬ死へのノスタルジアか 048:謎 いがみ合い傷つけ暮らす謎の縁なぜに惚れたか惚れられたのか 049:敷 無意識に敷いたレールの上を行く意識しているふり…

題詠短歌 2012年

041:喫 来ぬ人と知りてなお待つ喫茶店コーヒー色に想いも染めて 042:稲 逃げる陽に実らぬ稲は立ち枯れてなぜにどうしてこうなったのか 043:輝 輝きの日々は流れて海底の闇に流され沈む言の葉 044:ドライ 初恋の瑞々しさは保てねどドライフルーツみたいに甘く…

題詠短歌 2012年

036:右 ネオン咲く何処で消そうかこの想い右も左もわからぬままに 037:牙 虎落笛遠吠えさえもままならず凍てつく牙に我が身を捧ぐ 038:的 的を得た言葉ひとつに射抜かれて静かに割れた心哀れむ 039:蹴 校庭に声だけ残し消えた子よ蹴ったボールを追いかけたま…

題詠短歌 2012年

031:大人 眉毛さえ白髪混じりに成れの果て大人になれぬままに散りゆく 032:詰 夢の夢そっぽを向いたままの夜狭き寝床に詰め寄る吐息 033:滝 青緑心にしみる滝の音赤一輪に心奪われ 034:聞 聞く人もまた一人消え暗闇に愚痴念仏の祈りの儀式 035:むしろ 目指す…

題詠短歌 2012年

026:シャワー いつもより熱めのシャワー浴びてなお浮かぶ残像消せぬ残り香 027:損 喪失に耐える喜び知らされて損ずる時の砂を数える 028:脂 凍りつく脂の心もえもせず溶けて戻らぬ二度とあの日に 029:座 座してさえ目を合わさずに流れゆく時の重みに歪む窓辺…

題詠短歌 2012年

021:示 月曇り心の闇も見え隠れいつかきそうな別れを暗示 022:突然 小夜ふけて別れられなくなりそうで突然ですが別れましょうか 023:必 偶然の嬉し涙は必然の吐息重ねた闇の露草 024:玩 巡る夏どこに消えたかあのいのち玩具浮かべて遊んだ波と 025:触 今はも…

題詠短歌 2012年

016:力 力尽き消えゆくいのち今どこに生きた証を消さないままに 017:従 従えば失う命さからえば苦しむ命ままならぬまま 018:希 子に託すかなわぬ夢と知りながら希釈できずに膨らむ希望 019:そっくり 離れゆく心模様の不織布で浮気を隠す二人そっくり 020:劇 …

題詠短歌 2012年

011:揃 不揃いの想い並べた皿と猪口あれやこれやと食い散らかして 012:眉 すきま風眉間凍らせひた隠す重ねた嘘を崩さぬように 013:逆 恋心素直になればなるほどに逆鱗に射る震える指で 014:偉 母子手帳未完のままの偉人伝わが子に託す想い残して 015:図書 声…

題詠短歌 2012年

006:時代 掻く背中に浮かぶ想いの爪の跡そんな時代も確かにあった 007:驚 今もなお幼心の風に舞うこんな涙に驚くなんて 008:深 深々と沈むお酒を温めて人肌恋し秋の夕暮れ 009:程 枯らすまじ流す涙も程々に心の湿度明日へとつなぐ 010:カード 繰り返す望まぬ…

題詠短歌 2012年

01:今 ほかのひと想い浮かべて好きだよと今も好きかと問われ答える 002:隣 残り香を今も隣に偲ぶ夜の声も出せずに時は流れて 003:散 繰り返す季節巡れば散らす恋散る葉散る花実らぬ果実 004:果 老いてなお苦しむ恋の成れの果てさらに老いゆく切り捨てる爪 00…