題詠短歌 2010年

汚れた気分

096:交差 交差せぬ心と体交差する 月蝕くるまで汚れた気分 097:換 換えられぬ貴女の部屋に帰れない 月と心を凍りつかせて 098:腕 腕枕温もりもなく月隠れ イルミの帰路に棘も凍てつく 099:イコール 愛プラス貴女イコール 月隠れプラス憎しみセクスと嫌悪 100…

地獄を巡る

091:旅 誰よりも旅する二人月変化 同じ寝床で地獄を巡る 092:烈 烈烈の烈女の愛は強烈に 烈火烈寒烈日烈震 093:全部 全部脱げ月夜にさらせまだ脱げる この肉体はお前ではない 094:底 底無しのエゴイズムだねこの愛は 月さえ真っ赤に嫉妬で濡らし 095:黒 裸婦…

愛が恐怖に

086:水たまり 夕月と恋と闇とを水たまり 映せど所詮浅き夢見し 087:麗 月おぼろ醜さ詰めた縫ぐるみ 抱いて眠ろう明日は麗らか 088:マニキュア 哀しみを塗り重ねては剥ぎ磨き マニキュアみたいな月夜星降る 089:泡 月冴えて別れ告たる君の肌 閉ざして解けぬ泡…

毒で味付け

081:シェフ 満月を三日月に切るシェフは君 甘い吐息と毒で味付け 082:弾 愛憎を月まで射抜く弾丸に 込めた貴女の気配と落葉 083:孤独 別れても輝く孤独月ひとつ ひとり佇み見守るひとり 084:千 千回も擦れば果てるようように 月は巡りて千人目の女(ひと) 0…

口の冷たさ

076:スーパー スーパーで買ったお酒と月餅を すぐに食いたや満月の夜 077:対 対岸の君など好きにならないよ 月満ちるまで泣いていなさい 078:指紋 もう一度更待月に抱く君の 皮膚の全てに僕の指紋を 079:第 月欠けてかなわぬ夢に一人泣く 恋も学びも落第人生…

地獄の宴

071:褪 東雲の月色褪せて隠れゆく 悪いのは君でなく太陽 072:コップ コップ酒花を浮べて月映す 邪魔する君の温もり香る 073:弁 愛などと弁解はよせ!脱ぎすてて 月に向かって 己を恥じよ! 074:あとがき あとがきを先に記して挑む恋 新月さえも地獄の宴 075:…

やはり一人か

066:雛 雛祭り朧月夜に並ぶより 重ね合いたい人目気にせず 067:匿名 匿名でいいから君の本性を 月光にさらせ体でしめせ 068:怒 胸を突く月の怒りに今ここで 死を選ぶならやはり一人か 069:島 島々に登らぬ朝日月隠れ 神は何処か何処が地獄 070:白衣 有明の月…

冷たい自由

061:奴 三日月の椅子を目指して奴凧 貴女がつかむ糸切れぬまま 062:ネクタイ ネクタイと職を奪われ早三年 月見る首は冷たい自由 063:仏 月さして闇夜に浮ぶ仏の背 振り向かないでもう少しだけ 064:ふたご 憎しみを愛だなんてブルームーン ふたごみたいな二人…

甘露を舐める

057:台所 名月を眺める窓の台所 猪口に残りし甘露を舐める 058:脳 脳内の月も朧に惚けゆく 怖がる前に楽しい夢を 059:病 凍る月 心を病んでいるんだね 火照るばかりで重ならぬ恋 060:漫画 月だけが漫画みたいに浮かんでる 涙が描く墨絵の中で

題詠短歌 2010年

053:ぽかん ぽかんです月妖艶の劇場で好きなわけなど語れないまま 054:戯 戯れも飽き月よりも太陽で増え積もる毒よ消えされ 055:アメリカ 増えた星見失う月アメリカの自由が奪ったわがアルテミス(月の女神) 056:枯 枯れゆくはわが身ひとりかフルムーンの…

題詠短歌 2010年

049:袋 十五夜の酒の肴は子袋を噛み締め笑い否定する愛 050:虹 虹と月 星と太陽 何もない僕に貴女はもっと見たがる 051:番号 満ち欠ける月夜の宴抱く人は名前などより番号が似合う 052:婆 立待の月に祈りし早乙女よ鬼婆の声 隠せはしまい

題詠短歌 2010年

045:群 満たせれて満たされなくて満月に群れを離れて抱いた哀しみ 046:じゃんけん じゃんけんで負けた夢から消えてくれ上弦の月の上で静かに 047:蒸 涙ごと蒸発させて三日月の欠けゆく角で傷つきながら 048:来世 月満ちず想いは満ちず来世まで貴女とふたり月…

題詠短歌 2010年

041:鉛 求めても十一月の月遠く鉛直線に離れゆく女(ひと) 042:学者 月流れはや十二月飽きもせず学者のように見つめて想う 043:剥 剥ぎ取れぬ愚かさ笑って身を寄せて新月だから優しく抱いて 044:ペット 泣くよりはペットのように泣かせてよ下弦の月を待ち望…

題詠短歌 2010年

037:奥 七月の月を逃れて旅二人醜さ見えぬ闇の奥まで 038:空耳 空耳か空蝉セミか月涼し狂った女と暮らす八月 039:怠 倦怠期から始まったラブコメディー九月の月を見上げて怠惰 040:レンズ レンズ越し十月の月凛として痘痕か笑窪恋の駆け引き

題詠短歌 2010年

033:みかん 三月になれば月夜も緩むのかこれが最後かみかん皮むく 034:孫 孫の手も届かぬ痛み舞いて散る桜で消せぬ四月の月は 035:金 金でしか記せぬ愛の出納は待てど昇らぬ月まだ五月 036:正義 正義など闇に捨ておけ六月の月と二人を残して夜明け

題詠 2010年

029:利用 利用した恋の精算迫る鬼女貯めて月まで逃げるのかしら 030:秤 天秤に月と月日をかけたなら月は昇りて沈む思い出 031:SF 一月の月眺めてはSFのごとき永久なる愛凍らせて 032:苦 月二月苦しみばかり冴え渡る虎落笛さえ慰め唄う

題詠 2010年

025:環 月陽も沈みゆくまま沈みゆく叫びもせずに環海ひとり 026:丸 なにもかも丸くおさまるわけもなく月は満ちかけ心は朧 027:そわそわ 旅先はわかっています嘲笑うそわそわそわと月のシュリエット 028:陰 月光に騙されはせぬ陰部より淫部じゃないかそれが貴…

題詠 2010年

021:狐 疑れば狐日和の微笑みの中に隠せぬ涙流れて 022:カレンダー 日めくりのカレンダーなら薄れゆく流るる日々に募る想いは 023:魂 魂が消えゆく時は微笑んで魂消たなどと呟きながら 024:相撲 触れおうて体の重み感じてもひとり相撲の心の重さ

題詠 2010年

017:最近 どうしたの最近だよねこんなこと 最も遠くに想いが霞む 018:京 京急の赤い車両に閉ざされて昨夜と違う女と海へ 019:押 終るのか押印すれば何もかも愛し憎しみ暮した妻と 020:まぐれ 気まぐれに好きだと言ってしたキスで自由な日々は霙となった

題詠 2010年

013:元気 元気だという言葉さえ哀しみを増して疑惑の春泥ケ-キ 014:接 接しても触れなきままの琴線の奈落の底で戸惑うふたり 015:ガール いつのまに君しか見えぬスケジュール遊びを奪うガ-ルフライデ- (girl Friday=有能な女性秘書) 016:館 振り返る家…

題詠 2010年

009:菜 妻は去り長さ異なる菜箸で食する菜花茹で過ぎたらし 010:かけら 見渡せど何か足りないひとかけらどこにあるのかかけらを探す 011:青 青白き頬に涙の跡誰か髪を引っ張る愛の暴力 012:穏 穏やかな風で洗えぬ陰影の隠れデコルテ輝く刹那

題詠 2010年

005:乗 乗る鞍の置場なきままペガサスの消えゆく彼方月も隠れて 006:サイン 死ぬまでは届かぬサインSOS来たぜ応答友は地獄に 007:決 あの時も決別なんて決意したわけではないがもう終りだね 008:南北 老醜は何を意味する観相家水野南北何と答える

題詠 2010年

001:春 春なのに春は来ぬまま四面楚歌眠れぬ夜明け目覚めぬ息吹 002:暇 なぜ抱くの濡れた瞳で問う君に暇だからさと呟く本音 003:公園 公園のベンチに腰をおろす時想い増しけり失業の鳩 004:疑 青空に疑問符描く雲見上げラブホに向かう二人坂道