題詠短歌2011年2

サルビアの道

096:取 手に取ればサルビアの蜜赤々と 思い出燃ゆる逃げ去りし恋 097:毎 サルビアの蜜に染まりし思い出を 日毎変らぬこの道でまた 098:味 サルビアの一瞬の味に戸惑いて ビール飲み干す自販機の前 099:惑 誘惑に乗れぬ身体をひきずりて サルビア残しまたとぼ…

一輪の花

091:債 恋しくて答え債(はた)れば睡蓮の 葉の彼方には一輪の花 092:念 信念は形なさずに怨念を 沈めた池に睡蓮の花 093:迫 迫りくる老いの嵐に睡蓮は 声もたてずに闇に包まれ 094:裂 睡蓮の青の心は切り裂かれ 葉では隠せぬ底なしの沼 095:遠慮 瑠璃色の鉢…

貴(あて)ぶの時は

086:貴 咲き誇る百日草を道連れに 貴(あて)ぶの時は色を失い 087:閉 恋すれど百日草は幕を閉じ 冷えゆく闇に弱き虫の音 088:湧 地獄より百日草は湧き出でて 色さまざまに怨念を描く 089:成 舞う蝶は百日草を見失い 夢成らぬまま土に横たう 090:そもそも そ…

脇道小道

081:配 配慮さえするもされるも哀しくて 擬宝珠咲かす脇道小道 082:万 千を超え万を超えても哀しみは 色褪せぬまま擬宝珠は枯れ 083:溝 擬宝珠に近づくほどにあの人に 伝えきれない溝を深める 084:総 脇に咲く擬宝珠見えぬ貴女には 僕のすべてを理解できまい…

叫びのように

076:ツリー あの頃は日々背を伸ばすスカイツリー アガパンサスの叫びのように 077:狂 振り向けばアガパンサスは狂おしく 先行き見えぬ終りなき道 078:卵 黄身割れた卵の殻を破壊する アガパンサスを摘めない指で 079:雑 振り向かぬ時を逃れて雑踏の アガパン…

道の露草

071:謡 揺れ惑う心しずめて口ずさむ 童謡途切れ道の露草 072:汚 汚れなき言葉うしない露草も 涙も枯れて時は過ぎゆく 073:自然 僕らしい自分が消えて露草が 咲くも咲かぬも自然不自然 074:刃 露草のしずく癒せよ刃傷の 痕より深い言葉の傷を 075:朱 朱に燃え…

道は終った

065:羽 蒲公英の綿毛みたくは羽ばたけぬ無精の髭は白さを増して 066:豚 海風に水仙は揺れ豚まんの残りも冷えて道は終った 067:励 励ましの風にまたがり赴任する種よ何処ゆくタンポポ残し 068:コットン 皺くちゃのままに干されたコットンは余生に揺れてプリム…

題詠短歌 2011年

061:有無 朝顔の涙しずくは冷えびえと有無を言わせぬ愛欲の果 062:墓 手をつなぎ佇む寺の百日紅おなじ墓には入れぬ二人 063:丈 桔梗萎え心も枯れて冬篭る丈夫な恋も病募らせ 064:おやつ 戯れる時を失い猫柳おやつ咥えて孤独の散歩

題詠短歌 2011年

057: ライバル 黒百合にうつむく想い渦を巻く愛と憎とのライバル同士 058:帆 帆風受け孕み競り合う娘らの笑顔まぶしや向日葵の群れ 059:騒 歩は乱れ夾竹桃の胸騒ぎ一歩近づく恋の終焉 060:直 正直な想いはすでに霧散してエーデルワイスのはるか彼方に

題詠短歌 2011年

053:なう ひとり立つ布袋葵の水辺なう二人暮らした坂を転げて 054:丼 山百合が気になる部屋でマッコリを干す丼は欠けたそのまま 055:虚 日の当たる二人舞台の幕は閉じブーゲンビレアの風は虚しく 056:摘 摘花して一人育む恋よりも多く咲かせよ茄子の花たち

題詠短歌 2011年

049:方法 方法を見出せぬまま終りゆく朝顔枯れて種を残すに 050:酒 争いの酒気を咲かせて一輪の紫陽花さえも狭過ぎる部屋 051:漕 漕ぎ隠る二艘の舟の漣に睡蓮揺れて近づく離別 052:芯 紫陽花の別れの雨に心失せ芯無し帯は崩れゆくまま

題詠短歌 2011年

045:幼稚 野薔薇折る幼稚な愛の終焉に喉の渇きも思い出せずに 046:奏 うつむいて涙に濡れたコスモスの笑顔を求め風を奏でる 047:態 露草を踏みにじる朝つきまとう媚態の夜を逃れるよう 048:束 束の間のチューベローズを胸に刺し安楽よりは快楽の恋

題詠短歌 2011年

041:さっぱり 庭に咲くジャスミン浮かべ朝の風呂さっぱりと沈む昨夜の別れ 042:至 至らない自分の影が至る道アガパンサスが今年また咲く 043:寿 喜寿米寿卒寿白寿と続くのか泰山木を見上げる孤独 044:護 てめぇコロスあいつの声がこだまして護りきれない朝顔…

題詠短歌 2011年

037:ポーズ ポーズだとわかっていても芍薬の地肌触れれば恋路も冷めて 038:抱く 水芭蕉そんなつもりで抱くつもり遥かな夢を汚す現に 039:庭 庭に二羽喧嘩ばかりのニワトリの目には映らぬ撫子は揺れ 040:伝 オリーブの花咲く丘の夢に塗る伝えられない恋の伝説

題詠短歌 2011年

033:奇跡 来る別れ奇跡みたいな出会いすら鈴蘭と消す日常茶飯 034:掃 掃くように思い出ひとつかき消せばドクダミの地に箒の傷跡 035:罪 いつの間に罪を重ねて手渡したカーネーションに懺悔の笑顔 036:暑 残暑めが思い出させた失恋は汗で育てた山葵のから…

題詠短歌 2011年

029:公式 この恋に解の公式あるならば白根葵の山で暮らせる 030:遅 桜草群れて咲く道遅々として先延ばしする別れの小道 031:電 新しい家電も君も余所余所し小手毬枯れた住み慣れた部屋 032:町 あの町はこの人よりも寂しくて花水木さえ痩せて咲く道

題詠短歌 2011年

025:ミステリー ミセスでも日蔭の窓のゼラニウム咲くミステリー恋に溺れて 026:震 震えてるミモザの訳が恋人よ怒りだなんて気づかぬままに 027:水 見ず知らぬ心離れて睡蓮の瑞々しさはただ水臭く 028:説 寄り添えば躑躅まぶしく離れゆくまだ自分さえ説得でき…

題詠短歌 2011年

021:洗 恋ごころ洗い流して流れゆく忘れな草をつけた黒髪 022:でたらめ 恋すればまるで生命はヒヤシンスでたらめに舞う造花のように 023:蜂 トーストの蜂蜜堕ちた紅茶には恋を沈めて桜を浮かべ 024:謝 大根の咲かせぬ花の恋だから感謝と謝罪いつもの別れ

題詠短歌 2011年

017:失 言霊は行き場失い微笑みも文字も音さえ消え散る桜 018:準備 失恋の準備しましょうアネモネを探し出します日暮れの前に 019:層 三層の縺れる愛のミルフィーユ三椏紙に終わりなき地図 020:幻 厳格な生き様を見る幻覚は枝垂れ桜の迷い凍らす

題詠短歌 2011年

013:故 故障した曇は乱れてタンポポの別れの綿毛つつみ明日へと 014:残 残骸の雨に打たれて菜の花の春の心は昨夜の涙 015:とりあえず とりあえず夢物語繕うて菫の中で破る日めくり 016:絹 絹色の橋を渡れば万作の花を愛した人に出会える

題詠短歌 2011年

009:寒 寂しさを隠し揺れてる雪柳寒いと言って風に微笑む 010:駆 マーガレット追われることを期待して駆けゆく背なの風に舞い散る 011:ゲーム 終るときゲームのような恋だから荊の冠それとも月桂 012:堅 堅すぎる風の隙間に沈丁花目を閉じて待つ冷めた唇

題詠短歌 2011年

005:姿 舞台裏醜い姿消せぬままざわめく影のクロッカスの群れ 006:困 困らせて楽しむ鬼は捕まえず逃がさず薔薇の白を消すまで 007:耕 譲葉の心耕す鍬を入れ汚れたままの今日と決別 008:下手 下手では下手な手下の下手人が下手に薔薇を手にし手を下げ 下手~…

題詠短歌 2011年

001:初 蝋梅の誘ふ奈落に狼狽へてふたり初めて見た初日の出 002:幸 福寿草飾れぬ幸は甘すぎた玉子焼き食む狭すぎた部屋 003:細 細々と燃やす未練か水仙は枯れて枯れずに己を酔はす 004:まさか 結末は咲かずに消えたアザリアのまさかこうなることとは知らず