老いたウェテルの悩み

枯淡の色で

096:拭 ガマの穂で心拭えば従順に 癒えて童話の恋の寝枕 097:尾 尾行して棘刺す薔薇の無邪気さの 軽き言葉に振り向く血潮 098:激 老いらくは激しからずや傷つかぬ 日陰に恋す石蕗の花 099:趣 趣味的にセントポーリアと老いの恋 育みながら小部屋に飾る 100:…

それぞれの秋

091:締 単調な日々を締めくる夕餉には バジルとパクチーたっぷり飾る 092:童 老人も童も顔を赤らめて 七竈燃ゆそれぞれの秋 093:条件 ユーカリのアロマで胸を消毒し 条件を飲む振り返らずに 094:担 食い残すパセリと恋の未練乗せ 皿の担架は搬出された 095:…

たっぷりのジンを

086:片 昼間しか会えぬ恋路の雛菊の片時の夢それぞれの夜 087:チャンス 消え去りし恋のチャンスも老いゆけば忘れな草を飾る逃げ道 088:訂 木蓮が指す道行けば再訂の歌と想いは落陽の中 089:喪 恋せよと呟きかける立葵またとぼとぼと喪失の道 090:舌 君想い眠…

微笑みながら

081:秋 マルメロの秋の魅惑に歩をゆるめ共に老けゆく微笑みながら 082:苔 ヒヤシンス根も葉も枯れて隠す嘘水栽培の底は苔生し 083:邪 松風に風邪を返して邪に勝てば清し心に邪念ふたたび 084:西洋 西洋を異文化とする感性をわからぬ孫と食うパイナップル 085…

命カラコロ

076:桃 酔い痴れば天下御免の恋の夢桃源郷の貴女を奪う 077:転 蹴飛ばせば転げ苦しむシクラメン嫉妬嫉妬と音立てながら 078:査 春遠く検査結果を待ちながら枯葉カサコロ命カラコロ 079:帯 ドラセナの幸の香りに包まれて帯解く指をしばし休める 080:たわむれ …

消えた恋唄

071:籠 恋すれど実らぬままに空籠を背負い彼方を眺め山茶花 072:狭 優しさの思い出残し藤袴狭き川辺に消えた恋唄 073:庫 枳殻の棘に隠した日記帳文庫サイズに恋唄綴り 074:無精 口説くより酒が功徳と恋無精花梨の喉も今は嗄れ 075:溶 恋すれど踏みにじられて…

純潔の髪

066:息 すれ違う鉄砲百合の匂いして息と去りゆく純潔の髪 067:鎖 警戒の鎖で心繋がれて自由死す野辺 秋の麒麟草 068:巨 鎮魂歌巨木となりし銀杏背にひとり一人の恋の思い出 069:カレー 失恋とカレーの時は水恋しグリーンネックレスは水いらぬけど 070:芸 高…

しぶとさ保ち

061:企 老いの恋企てごとは穏やかに弁慶草のしぶとさ保ち 062:軸 生活の軸を狂わす妖艶の匂い揺らして迫る夜顔 063:久しぶり 杜鵑草似たあの方と久しぶり秘めた想いを会う日纏いて 064:志 実葛その実程度の志あかく染まりし恋の成就を 065:酢 松茸を黒酢に漬…

夢にうなされ

056:晩 幾晩もあの日別れたあの場所のアガパンサスの夢にうなされ 057:紐 トリトマの冷めた聖火に託す恋熱き想いを紐で束ねる 058:涙 鷺草の消えゆく恋はまぼろしの儚き涙老いゆくままに 059:貝 貝づくし手酌すすみて葉錦の赤と青とに心も別れ 060:プレゼント…

変わらぬ朝に

051:囲 囲われた高貴な恋のクレマチス覗けば蔓で首絞められて 052:世話 夜の声隠し世話するひと眩しアスパラガスは変わらぬ朝に 053:渋 揺れ惑う髭撫子に恋の雨ふられるたびに渋さを増して 054:武 傷癒えぬままに危険に誘われ月下香に酔う恋の落武者 055:き…

踏みにじられて

046:犀 歳月は暴徒と化した犀の群れ忘れな草は踏みにじられて 047:ふるさと 人類のふるさとに咲く花蘇芳裏切りユダを今も偲んで 048:謎 恋の謎夢見る時は長いのに片栗みたく姿短し 049:敷 黄菖蒲に心惑わせ躊躇いの敷居跨ぐか水際の恋 050:活 肥後系の花菖蒲…

思い出探し

041:喫 アザレアの喫茶にひとりまたひとり愛された日の思い出探し 042:稲 稲刈られ価値なき花かストックのまだ咲かぬまま冬日さす愛 043:輝 無為の日に輝く調和ホトケノザ人知れず座す生命の揺らぎ 044:ドライ ドライではスノーフレイクの純潔を保てぬゆえに…

小部屋の別れ

036:右 傷ついた右往左往の蹠を蚊帳吊草を踏みて労わる 037:牙 喜から怒へローストビーフかじる牙カラジウムある小部屋の別れ 038:的 落日の秋海棠にうなだれて一方的な恋の終焉 039:蹴 立ち止まりスプレーマムを蹴らぬよに愛する勇気そして忍耐 040:勉強 勉…

喜悦を捨てる

031:大人 混ぜるほど荒唐無稽に粘ついて大人の恋はオクラのように 032:詰 詰め寄ればエーデルワイスの尊さは悲惨の泥に喜悦を捨てる 033:滝 繊細な滝に打たれて鷺草の汚れを知らぬ夢に騙され 034:聞 孔雀草揺らぎ聞こえるざわめきは現状打破の渇望の声 035:…

汚れた想い

026:シャワー 会えぬ日々百日草を雨が打つシャワーで流す汚れた想い 027:損 巧妙に思い出損じず続け咲く日々草の恋は敏感 028:脂 酔蝶花枯れて酔えぬ日脂ぎる闇の支配に忍び従う 029:座 座して見る今は不要の糸瓜水時の心は悠々自適 030:敗 恋すれどただし叶…

心ゆたかに

021:示 花縮砂を示す貴女の細腕に翻弄される心ゆたかに 022:突然 突然にトルコ桔梗を手折るよに優美な想い心に飾る 023:必 必然の輝きを増すこの時と共に死ねるかトリカブトなら 024:玩 玩ぶよい語らいを茄子色の中へふたりで中でふたりで 025:触 離れ住むブ…

露草の中

016:力 力なく彼女の前に跪き尊敬されぬ露草の中 017:従 心病み恋に焦がれて平安の鬼灯市を従い歩く 018:希 感覚も希少の恋に満たされてグロキシニアの華やかな日々 019:そっくり 常に燃ゆハイビスカスにそっくりな恋に酔い痴れ美酒に酔い痴れ 020:劇 つく嘘…

悶えを増して

011:揃 不揃いの夜が危険な楽しみを月下香咲き悶えを増して 012:眉 野薊の棘刺す権利堪え忍ぶ眉をひそめて夜が開けるまで 013:逆 移り気な待宵草の逆悪に生の至純の快楽深めて 014:偉 偉大なる子供のように老いらくのアガパンサスよ恋は訪れ 015:図書 図書室…

暮らした時代

006:時代 自由から逃れるためにジャガイモの花の慈愛と暮らした時代 007:驚 一瞬の驚きの夢フクシアは好みの色の恋を誘う 008:深 山葵風深く吸い込み目覚めゆく恋は泣くもの人間的に 009:程 道程に白詰草の季節来てまた約束を果たせぬままに 010:カード オリ…

老いらくの今 老いたウェテルの悩み

001:今 誠実な山吹枯れて若き日の悩みも褪せて老いらくの今 002:隣 蘇る風あたたかき隣り人カーネーションの愛を解かして 003:散 アスチルベ人を惑わす精霊の花は散りても自由な恋を 004:果 老いて病む心の果ての子守歌希望労わる山査子の庭 005:点 点々と匂…