2019題詠短歌 二人の部屋で

2019-041:妥

生と死を妥協させたら生きていた

落ち葉の中の二人の部屋で

 

2019-042:人気

あの頃は人気芸人より僕が

笑わせたよね今はどうして

 

2019-043:沢

沢山の携帯写真見ずに消す

きしむベッドも今夜で処分

 

2019-044:昔

昔から辿り着けないあの人を

今の暮らしの中で夢見る

 

2019-045:値

価値観の異なる二人目を閉じて

しらけた部屋でラジオを消した

 

2019題詠短歌  笑うしかない

 

2019-046:かわいそう

かわいそう  ごめんね君は僕のこと

知りすぎたよね愛より先に

 

2019-047:団

青春の団体さんが過ぎて行く

涙と笑顔ため息と花

 

2019-048:池

星屑が孤独の池に消え沈む

僕の影さえ呼吸を止めた

 

2019-049:エプロン

エプロンで涙隠した手料理が

甘すぎたから笑うしかない

 

2019-050:幹

絵の幹に花のため息束ね塗る

過ぎ去りし日の悲恋の色で

 

2019題詠短歌  今などなくって

 

2019-051:貼

気弱だと決めつけられて喋れない

口にテープを貼られたみたい

 

2019-052:そば

幻影のそばにたたずむ過去未来

涙枯れても今などなくて

 

2019-053:津

ふられ雨津波のように水は増し

乾く心が悦ぶ不幸

 

2019-054:興奮

大人にはなれないままの微笑みで

興奮しない消化試合を

 

2019-055:椀

夜明けまで哀しむ酒を飲みたくて

止め椀残し雨降る街へ

 

2019題詠短歌  奪った眠り

 

2019-056:通

枯葉道通過していくカップルの

微笑み真似てまた増えた皺

 

2019-057:カバー

傷つけてしまったあの日冷えきった

枕カバーが奪った眠り

 

2019-058:如

若いころ真面目な顔でついた嘘

兵士の如く君を守ると

 

2019-059:際

水際に立てば会話も虚しくて

手の温もりを分かち合うだけ

 

2019-060:弘

弘前の城の桜の剪定は

林檎育む技術活かして

2019題詠都々逸 したふたり

2019題詠都々逸 したふたり

2019-021:スタイル

(ーー;)顔はともかくスタイルだけは

もっと良かった昔はね

2019-022:酷

(ーー;)酷な喧嘩はやめましょ飲もう

どうせ明日には消える恋

2019-023:あんぱん

(ーー;)おはぎよりかは あんぱんみたく

甘さ隠した人が好き

2019-024:猪

(ーー;)今夜猪鍋熱々だけど

しない火傷をしたふたり

2019-025:系

(ーー;)俺は家系そう言うあなた

文系ですかと聞いたのに

2019題詠都々逸 飢えたまま

2019-026:飢

(ーー;)飲んで抱かれて抱かれりゃ飲んで

だけど心は飢えたまま

2019-027:関係

(ーー;)関係ないでしょ昔のことは

愛しあいましょ今だけは

2019-028:校

(ーー;)学校なんかじゃ教えてくれぬ

ことを先生(せんせ)に指導され

2019-029:歳

(ーー;)シワも増えたが笑顔も増えた

ふたり暮らした歳月で

2019-030:鉢

(ーー;)私みたいね小鉢に残る

誰も食べない一切れは

2019題詠都々逸 泣くところ

2019-031:しっかり

(ーー;)しっかりしなよと自分をせめて

みても涙が増えるだけ

2019-032:襟

(ーー;)襟を正して別れるはずが

裾を乱されもう一度

2019-033:絞

(ーー;)首を絞めてよ殺しちゃだめよ

ちゃんとイカしてほしいから

2019-034:唄

(ーー;)父が遺した小唄のテープ

キカイないから聴けぬまま

2019-035:床

(ーー;)寝床寝るとこ抱き合うところ

今は一人で泣くところ

2019題詠都々逸 染められて

2019-036:買い物 

(ーー;)高い買い物させる気ないが

買えぬ男に惚れはせぬ

2019-037:概

(ーー;)仲は概していいほうだけど

いずれ害にもなりそうで

2019-038:祖

(ーー;)祖先たどれば兄弟なのに

なぜについたかこんな差が

2019-039:すべて

(ーー;)すべてなかったことにはできぬ

いまだ消えないキスのあと

2019-040:染

(ーー;)暗い色から明るい色へ

惚れたあんたに染められて

2019題詠短歌 僕のスタイル

2019題詠短歌  僕のスタイル

 


2019-021:スタイル

騒がしい未来が変えた気弱さが

静かに生きる僕のスタイル

 


2019-022:酷

残酷に眠れぬ夜に忘れたい

君をあれこれ夢見るように

 


2019-023:あんぱん

春の風僕はあんぱん食べながら

悪魔のふりで抱きしめた君

 


2019-024:猪

恋の事故猪突猛進禁止路は

過去と未来が曲がりくねって

 


2019-025:系

保存する汚れた恋の系列は

まずは冷たい水で洗って

 


2019題詠短歌  歳月の檻

 


2019-026:飢

言葉には出来ないままで飢えていた

好きだったのに揺らぐ虚しさ

 


2019-027:関係

関係は運命までも侵蝕し

僕が僕ではいられなくなる

 


2019-028:校

校庭の光溢れて走る君

暗い校舎で僕も微笑む

 


2019-029:歳

永久の愛のキセキを夢に追い

老いて独居は歳月の檻

 


2019-030:鉢

若き日の二人の宴つなぐ手と

小鉢ひとつの漬物だけで

 


2019題詠短歌  物言わぬまま

 


2019-031:しっかり

しっかりと歩けずよろけ枯葉踏む

私は私ボケてゆくとも

 


2019-032:襟

話すたび広がる嘘が襟足の

汚れとなりて落とせぬままに

 


2019-033:絞

雑巾を絞る力も衰えて

泣くも笑うもひとりひっそり

 


2019-034:唄

たっぶりとレモン絞って飲みほして

ひとりカラオケ昭和の唄を

 


2019-035:床

床の間に母が遺した人形は

夕日の中で物言わぬまま

 


2019題詠短歌  脱ぎ捨てたまま

 


2019-036:買い物 

買い物に出かける欲も消え失せて

破れたGパン脱ぎ捨てたまま

 


2019-037:概

今はもう概ね闇に包まれた

貴女も星も過去も見えない

 


2019-038:祖

祖先らが子らに託した魂も

星も未来も夢も薄れた

 


2019-039:すべて

泣きそうなすべての今は過去となり

闇夜の道を駆け抜けていく

 


2019-040:染

大袈裟な夕陽に背中を染められて

心鎮める雨は降らない

2019題詠都々逸 好きな人

好きなひと

001:我
(ーー;)いつもやんちゃで我が儘だけど
何をされても好きなひと

002:歓
(ーー;)酔ったあなたは合歓木みたい
いつの間にやらうなだれて

003:身
(ーー;)恋も暮らしも背伸びをせずに
ちゃんと合わせた身の丈に

004:即
(ーー;)今日の食事は即席ばかり
明日は出前の恋がいい

005:簡単
(ーー;)嘘を見抜くは簡単だけど
本音見つける難しさ

急かす人

006:危
(ーー;)見つめられたら危うい恋と
知っていながら寄り添うて

007:のんびり
(ーー;)今日はお前とのんびりしたい
言っていながら急かす人

008:嫁
(ーー;)嫁になんかはなりたくないの
だけどあんたに嫁ぎたい

009:飼
(ーー;)主に従う飼い犬みたい
なのに食事は作らされ

010:登
(ーー;)まだよまだまだも少し高く
登りきるまでいきたいの

同じ宿

011:元号
(ーー;)昭和生まれの二人じゃないか
元号変われど同じ宿

012:勤
(ーー;)勤め済んだら寝かせてあげる
手抜き仕事じゃ帰さない

013:垣
(ーー;)垣根越し見る愛しのあなた
越えてゆきたい猫みたく

014:けんか
(ーー;)けんか別れじゃないのよでもね
あれが合わずに馴染めずに

015:具
(ーー;)絵の具ちょうだい あなたの嘘に
色を塗りましょ許すため

見たいひと

016:マガジン
(ーー;)サンデーマガジン エロ本よりも
今じゃわたしを見たいひと

017:材
(ーー;)鍋の材料 そろそろダメね
待っていたのに今日も来ず

018:芋 
(ーー;)芋は焼いたら甘みを増すが
妬いてみたとてつらいだけ

019:指輪
(ーー;)もらった指輪は抜けなくなった
なのにあんたは すぐ抜ける

020:仰
(ーー;)燃えて果て行くあなたの汗が
仰ぐわたしの頰濡らす

2019題詠短歌 刻まれる皺

刻まれる皺

001:我

残酷な天使のように微笑んで

老いゆく我に突き刺す言葉

002:歓

老いてなお運命などは知らぬまま

蒼い散歩の風に歓ぶ

003:身

振り返るもしも我が身に羽あらば

気づくだろうか神話の未来

004:即

パトスまで即身仏は朽ち果てて

価値ある死へのアンチテーゼか

005:簡単

簡単に眠れる夜は失われ

眠れぬ首に刻まれる皺

 

土に寝転べ

 

006:危

いたいけに微笑む髪を見つめれば

危険な恋の光を放つ

007:のんびり

のんびりと黄昏消える思い出に

生きた歴史を風に飛ばして

008:嫁

生きのびる責任だけを転嫁され

神なき闇に私は生きる

009:飼

飼い犬は空に潰され自由など

知らなくていい土に寝転べ

010:登

暑すぎて逃げ出す愛に滲む汗

階段登る背中に別れを

 

空を押し上げ

 

011:元号

百年の平和が続きますように

元号に二人の願い

012:勤

勤勉な父母が育てた柿の実は

親亡き今も空を押し上げ

013:垣

徒長枝が垣根を乱し庭は荒れ

ハナミズキまで咲かずに枯れた

014:けんか

果てのないけんかばかりの君なのに

白い下着にひきつけられて

015:具

具をよけて白い心を探す日々

あの頃確か好きだったのに

 

 古びたチラシ

 

016:マガジン

あの頃の貴女の声が消えていく

マガジンラックに古びたチラシ

017:材

青春を楽しむための材料に

気づかぬ昔そこにある今

018:芋

蒸かし芋小さな手にはまだ熱く

それが僕らの時代のおやつ

019:指輪

永遠誓う離婚指輪があるならば

手放せぬまま老いゆく指に

020:仰

仰ぎ見る小さな星に託す恋

雨か月かで消えゆくひかり

題詠都々逸 別れどき

096:協
(ーー;)少しくらいは協力してよ
自分ひとりで いかないで

097:川
(ーー;)親子三人川の字なんて
夢ね今夜も大の字で

098:執
(ーー;)追っておいでよ執念深く
そんなお方と出会いたい

099:致
(ーー;)一致なんかはするはずないわ
所詮男と女では

100:了
(ーー;)テレビドラマも終了したし
飽きた恋にも別れどき

題詠短歌 春が流るる

096:協
一滴の水が雨から川となり
協働から橋がうまれた

097:川
かさを増し川を急かせて雪解雨
橋の袂に春が流るる

098:執
執筆の筆折る今も妄執の
雨降る橋でいじる携帯

099:致
テレビでは致死量の雨橋破壊
傍観者はまた酒を注ぐ

100:了
雨に濡れ別れの橋を去る君よ
了解なんかしてはいないよ