題詠短歌 2011年

題詠短歌 2011年 番外

早や師走いつまた来るか今も揺れ外気冷たく孤独の闇に 一人見る今宵静かな海と月ふたたび来るな津波と地震 鬼ごっこ周りのみんな今どこに鬼さんこちら海から逃げた かくれんぼまだ隠れてるいじめっ子お手てつないでみんなで探そ みなが消えママもほんとはい…

題詠短歌 2011年

097:毎 結ぶ実はいつになるやら栗の花愛を憎しみ毎度の喧嘩 098:味 一振りの塩味不足の黄昏は昼顔に朱を酒には藍を 099:惑 鬼灯の破れ飛び出す惑乱の種ひろうても戻らぬ時間 100:完 完泳を果たせぬままに落武者は流れる夏至の花を咥えて

題詠短歌 2011年

093:迫 脅迫の愛のメールを蛍草みつけて決めた着信拒否に 094:裂 切り裂いた心と仲を月下香わすれた頃に夜風が運ぶ 095:遠慮 思慮あらば遠慮もするが老いらくは枯れゆくリラの恋にひれ伏す 096:取 取り柄なく誰も見上げぬ降る雨に身を横たえて野薊の中

題詠短歌 2011年

089:成 時は枯れ歳月ひとり時計草 成田のお札よごれゆくまま 090:そもそも そもそもは花などいらぬ君おれば君なき道に野ばらを探す 091:債 債鬼らに命奪われ流す血のハマナスは咲く赤さを増して 092:念 待つ念も儚く揺れて紺青に待宵草と歪む満月

題詠短歌 2011年

085:フルーツ 母ちゃんの花はすぐ枯れ散るだけとフルーツ娘は匂いで叫ぶ 086:貴 貴やかな紫君子蘭(アガパンサス)は貴腐ワイン高く掲げて恋の訪れ 087:閉 閉された想い朽ち果て歳月の砂塵のなかに舞う忍冬(すいかずら) 088:湧 恋路老い泰山木の香を胸に湧…

題詠短歌 2011年

081:配 紫陽花の心配りの配る色とかした雨で涙を描く 082:万 愛の通夜かほりが告げるジャスミンの万言こめて一秒のキス 083:溝 溝涜に縊る仲間を溝隠 咲いて隠して畦織りの畦 084:総 総括を忘れたままにジキタリス帽子の中に毒を残して

題詠短歌 2011年

077:狂 微笑めば狂う老婆も狂い咲く春夏秋冬流れなき施設(へや) 078:卵 あと一貫魚卵の鮨を持て余し食うか捨てるか紫陽花(アナベル)に問う 079:雑 雑駁な知識の種は実にならず膝は痛めど花も咲かさず 080:結婚 白檀が染み込むだけの礼服は結婚式には呼ば…

題詠短歌 2011年

073:自然 残酷な仕打ちの後に山査子を微笑み咲かす自然の女神 074:刃 母の歯は刃こぼれしても剣舞い白詰草の甘い傷あと 075:朱 朱肉添え離婚届を朱(あけ)に染め さし出す妻を癒せぬ朱蘭 076:ツリー 藤は垂れ心に入りて枯れてなおスカイツリーより高く深くに

題詠短歌 2011年

069:箸 古ぼけた絵は鈴蘭の時を食べ老いて幾度も箸からポロリ 070:介 発語せぬ失禁の老婆尊厳と水芭蕉との介護ノスタルジア(郷愁) 071:謡 夕暮れの俚謡の道を歩む背に咲く撫子の三味の音残し 072:汚 汚れてもなお一輪は散らぬまま菖蒲の葉風未練残して

題詠短歌 2011年

065:羽 誇張した胡蝶蘭は淫乱へ羽蝶蘭は有頂天に 066:豚 豚犬の子は豚犬を産み増やし豚の饅頭(シクラメン)枯れて色は豚草 067:励 枯れ細る手に花束のカーネーション母は励ます老いた倅を 068:コットン コットンでは落せぬシミの故郷はドクダミ臭う脱脂綿の…

題詠短歌 2011年

061:有無 牡丹背にムー大陸の有無を問う髪と瞳は惓むこともなく 062:墓 墓守の子は引き籠りアマリリス咲けど儚い部屋を守りて 063:丈 オリーブの燦たる葉音丈高し歌の言の葉包み掻き消す 064:おやつ 窓辺咲く選り取り見取りポリアンサおやつのロゼはホテルで…

題詠短歌 2011年

057:ライバル 太陽のライバルなんて北風は君と薔薇とを脱がす前フリ 058:帆 行く宛も定まらぬらし帆翔の下で揺れ泣く柳飛べずに 059:騒 騒騒とマーガレットの追憶は騒人なれずに酔うてDV 060:直 直視して伝えたいこと正直に直に素直な菫になって

題詠短歌 2011年

053:なう まだ咲かぬ桜の下の上野なう来ないでいいよ来ないでおくれ 054:丼 桜丼白い素肌に花散らし覆い隠せばさらに増す欲 055:虚 虚無僧の如く心を天蓋に隠し君待つ譲り葉の風 056:摘 摘む花もなき雑踏でつままれて狐誘う花園に死す

題詠短歌 2011年

049:方法 離別せぬ方法重ね騙し塗る枯れても部屋にまだヒヤシンス 050:酒 ベランダで嗤うパンジーに脅されて酔うてバンジー五勺の酒で 051:漕 絵の花を愛でる老婆は時忘れ漕ぎ徘徊る狭き廊下を 052:芯 花芯見て百七十センチある白くか細き少女駆け去る

題詠短歌 2011年

045:幼稚 シリアルを食べる音さえ煩くて幼稚と万年青枯らし去る女 046:奏 琴線を奏でる日の出肩を抱く桜散るとも桜咲くまで 047:態 態とめくざわめきの街態々と桜の下で別れ話を 048:束 束ね髪解く束の間に燃ゆる恋束縛を解き昼のアザレア

題詠短歌 2011年

041:さっぱり さっぱりと髪を洗いて花の朝夕べの酔いはひらりと流し 042:至 芝桜寝転びながら夏至までに全て読み終え僕は出て行く 043:寿 還暦の子のため揚げたカツ焦がし米寿の母と泣くカーネーション 044:護 散る花は風に渦巻き地を這うて護り切れずに消え…

題詠 2011年

037:ポーズ プロポーズする気ないのにするポーズ熊谷草を差し出しながら 038:抱く 暗室でダークマターを抱く日々を貴女が変えた光さす胡蝶花(シャガ) 039:庭 海棠を見上げる庭の黒猫よ僕の痛みを半分あげる 040:伝 花水木知らなくていい戦争は伝えたくない…

題詠 2011年

033:奇跡 藤は揺れ奇跡ばかりの日常は平凡な日々となり家族は 034:掃 吐けば掃く消せない躑躅掃けば吐く上手く笑えずグラスの欠片 035:罪 罪気積む紡げぬ罪の償いは芍薬のキス手酌の後で 036:暑 暑いのは君のせいかな流れ出る冷汗落ちて咲く桜草

題詠 2011年

029:公式 公式のスポットライト新婦浴び深山嫁菜を手にし溜息 030:遅 妖艶の灯りが消えた街並みの染井吉野は開花遅れて 031:電 携帯の充電果ててお別れのメール半ばのベンチに木蓮 032:町 夕焼けのあの町まではチューリップと逃げていくから追いかけないで

題詠 2011年

025:ミステリー ヒステリーを起こした未婚女性(ミス)はミステリー首を傾げるスカピオサさえ 026:震 震の字はゼラニウム咲く地の底に封印します詩など作らず 027:水 水子らの水掛論はもうやめて矢車菊に水をください 028:説 説き諭す非もおぼろげにまた恋の…

題詠 2011年

021:洗 洗おうとすれば汚るる恋心かすみ草泣く黒い雨打つ 022:でたらめ でたらめな恋などせぬわ蓮華草でたらめ暮らしでも踏めぬ花 023:蜂 小手毬と親しむ蜂も事あらば我を刺すのか命をすてて 024:謝 いつだって感謝してるさ今はただアジアンタムが気になるだ…

題詠 2011年

017:失 碇草衰えるのは失言を自分自身に繰り返すから 018:準備 花知らぬアーモンドチョコ準備して実らぬ恋を探して散歩 019:層 層一層老いて憧る清貧は高嶺過ぎたる大根の花 020:幻 幻術の根を侍らせてヒヤシンス水栽培のドラマは続く

題詠 2011年

013:故 故障した時計の隅の綿ぼこり母子草咲く心の部屋で 014:残 残尿の拭えぬ想い辛夷咲く老いの坂道ゆるりゆるりと 015:とりあえず とりあえずまだ生きてよか翁草やがては風に乗って消えよか 016:絹 絹を裂くような声して目を覚ます枝垂れ桜の影に怯えて

題詠 2011年

009:寒 連翹が告げる春さえまだ寒く桜を見ずに死しし人々 010:駆(牧童) ユキノシタ気づかぬままに駆け込みの寺に向かう背何をか語る 011:ゲーム 老いらくの咲かせてならぬケシの花咲いてしまったゲームのように 012:堅 霜履(ふ)めば堅き氷に至るなば桜を…

題詠 2011年

005:姿 地の底を見つめる姿 遠くから瓔珞百合(フリチラリア)に手を触れもせず 006:困 紺碧の困惑ばかり想い出す忘れな草よ忘れさせてよ 007:耕 老朽の地を耕せば今もなおアンスリウムの血は絶えぬまま 008:下手 生きるのが下手だったからフルムーンを見ず…

題詠 2011年

001:初 名も知らぬ花と初めて出会う朝瓦礫と化した国揺れやまず 002:幸 地に落ちた椿の上の車いす幸を見たのか老婆微笑む 003:細 向上の心細々伸び悩む土筆が消えた川沿いの道 004:まさか 一瞬に揺れる想いも凍てつきてまさかアネモネ造花の世界