3.11大震災、再録

3.11大震災、あれから三年、当時、僕は介護福祉士の資格を取るため特別養護老人ホームで実習中だった。寝たきりや車椅子の方が多く、大きな震災が起きたら全員無事に避難することは不可能に近い。
震災後、利用者から「東京に大震災が来たら私たちはどうせ助からないのだから、私たちをおいてあなたは逃げてくださいね」と言われてしまった。そんなことできませんよ、ずっとそばにいますからね、と答えた。この気持ちは嘘ではない。今でもこの気持ちは変わらない。
後日、施設職員に災害対策マニュアルが配られ、その中には、まず自分の命を守ることと明記されていた。これは消防士のマニュアルにも書かれているらしい。
でも僕には殉職をよしとする気持ちが根強くあり、自分の命を犠牲にしてでも、自然と利用者の命を守る動きをするだろう。ただし老人ホームの場合は、まず若い職員たちの命を優先して避難させるべきだと僕は考えている。そして還暦を過ぎた僕は動きが取れない方たちと一緒にその場に残るつもりでいる。

三年前、折込都々逸をさかんにつくっていた。折込都々逸とは四節のそれぞれの頭に、あらかじめ決められた文字を使ってつくる都々逸だ。この頃も色っぽい都々逸づくりを目指していたのだが、震災直後は流石に作風が変っている。
震災当時の心境になって都々逸をつくるのは難しいので、その時につくった都々逸を再録させていただく。
「さいがい・災害」「おみまい・お見舞い」「ふつこう・復興」を折込んである。

「さいがい・災害」

災害ふたたび
いつまた来るか
外気冷たく
今も揺れ

去るに去れない
命は重く
瓦礫の下で
今もなお

咲けば散るのが
命というが
がんぜない子の
命まで

さ迷う命
今どこにおる
学舎見上げて
いるのやら

寂しさこらえ
今また笑顔
頑張る子らが
愛おしい

さよなら上手に
言いたいけれど
我慢しようか
今少し

「おみまい・お見舞い」

鬼さんこちら
水から逃げた
周りのみんな
今どこに

お手てつないで
みんなで探そ
まだ隠れてる
いじめっ子

おやつ分けあお
見知らぬ子らと
漫画もいっしょに
一冊を

おままごとしよ
満ち潮までは
ママはほんとは
いないらし

おやすみなさい
みんなが消えた
ママまで一緒に
行っちゃた

「ふつこう・復興」

再び来るなよ
津波地震
今宵静かな
海と月

ふざけすぎよね
罪さえ知らぬ
子供の命
奪うなど

不休不眠の
疲れも忘れ
この災難を
受けて立つ

不幸乗り越え
強さを増した
子らは勇気を
失わず

復興目指し
つながる想い
孤独の闇に
うろたえず