髪仕草

びんのほつれは枕のとがよ
  それをおまえさんに疑られ

    遊女にとって、彼氏に、びんのほつれを、責められるのが辛かったらしい。
 
    廓そのものが日常とは別世界の舞台であり、劇的な恋物語を創り出してきた。女も客も演じ、語り継ぐことによって、また新たな恋物語が生まれてきた。

    髪は女の命。
    男は女の髪を乱さないよう愛撫することが良しとされていた。特に人妻の髪は乱さないよう男も心配りをした。
    お風呂に一緒に入るときでも、女の髪を濡らすのは無粋だと僕は教えられ、それなりに気配りをしてきた。

    ところが時代は変った。
    女の髪が濡れないように気配りしていても、自分で髪を平気で濡らす女が増えてきた。中にはラブホで髪を洗う女さえいる。一緒にお風呂に入る時、シャワーキャップをする女はもっと色気がないけどね。

    ヘアスタイルの変化やフィットネスクラブの一般化などの要因も考えられるが、髪に対する安易な心が、女たちの髪仕草から色気を奪ってしまったようだ。